検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:418 hit

第3話 『好き』 ページ4

保健室につくと、杉田くんは熱を測るやつを私に差し出した。
「ん。とりあえず、熱測れば。」
杉田くんはそれだけ言うと黙り込んでしまう。せっかく杉田くんといられるのに、何も話さずに終わるのは…と思ってしまう私はなんなのだろう。とりあえず、熱を測ったが、当然のごとく平熱である。
「…三十六度三分?平熱じゃん。」
「…あ、あの、杉田くん。本当は熱なんか最初からなくて…。」
幻滅、されるだろうか…不安に思いながら私は俯く。怖くて、彼の顔なんか見れない。
「…そ。熱がないなら良かった。」
(え…怒って、ない?)
少なくとも、彼は騙されたのと同じ感じではないのか。もちろん、そんなつもりは私にはなかったが、彼が気を悪くしてなさそうなのは意外である。
「…怒ってないの?杉田くん。華に嘘つかれたのに。」
そう、恐る恐る聞いてみると、杉田くんはかすかに目を見開いて…そして平然と、いつもと何も変わらない口調で答えた。
「怒る?何で。熱がないなら良かったじゃん。俺、そこまで怒りっぽくねぇよ。…でも、ないなら早く戻ろうぜ。」
フッ、と杉田くんは微笑んだ。
(なんで、こんなにドキドキするの。杉田くんに…)
彼の笑顔が脳裏に焼き付いて離れないのだ。私は顔がほんのり熱くなるのを感じながら、また無愛想に戻った彼の隣に並んで、コートへと戻った。
クールな杉田くんの、あの微笑み…またもう一度見たい。
「ちょっと、華ー!何嘘ついてんの?杉田くんに。」
コートで華を見つけ、そう言うと、華はニヤニヤとした笑みで私を見て言う。
「杉田くんと、進展あったー?」
「…はっ?」
いきなり何を言い出すのか。唖然として華を見つめ返すと、華は懲りなくまだニヤニヤしている。
「まー、分かんないなら良いけど。ほら、早くしないと基礎練始まる。」
何だかよくわからないが、はぐらかされてしまった。
そして、今日の練習メニューが終わり、下校時刻となったので、私は華とラケットケースを持ち、帰る。
その途中で、タイミングを見つけて私は華に聞いてみた。
「…ねぇ、華。少し聞いていい?」
「何?」
「…あのさ、さっき…保健室で杉田くんといたじゃん?あのとき、なぜか杉田くんにドキドキしてさ…何でだと思う?」
そう言うと、華はフフっ、と笑みをこぼした。
「…それ、杉田くんのことが好きってことでしょ。」
(え…)
でも、そうか。私は…杉田くんのことが…好き、なんだ。初めて気付いたよ…これが恋なんだって。

第4話 『告白?』→←第2話 『ドキドキ』



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:クール , 学園 , 一途   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アヤ | 作成日時:2018年9月7日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。