encounter（��） ページ30
『津島A。首領がお呼びだ』
電話の向こうで顧問役の感情の無い声が告げた。
簡潔に云う。
首領から呼び出しを指示された。
俄に電話が着たと思えば、なんと奇しい。
首領から直々の呼び出しとは、そこ迄偉くなった覚えは無いが。
実は津島が首領――森鷗外と面を合わせ話した事は、未だ三度しかない。
始めて森と出逢った時、中原の元での仕事受けを命じられた時…………二度だった。
「……」
津島は空虚を纏った瞳を瞬かせる。
まるでどうでも良さそうな、興味の無さそうな瞳。
溜め息吐き、先刻迄に纏めておいた資料や、書類を胸に抱え、面倒臭そうに歩き出した。
「津島です。入りますね」
扉を開くと、お決まりのエリスちゃあん！ と騒ぐ森は居らず、唯目を細め、眉を眉間に寄せ、机に両肘をついて顔の前で手を組んで居た。
「御指示にお従いし、図々しくも下級構成員である津島が参上致しました」
少し何故私を呼んだんだ、と云う愚痴の意を篭めてそう言い放つ。
後に間を開け、ご用件は何でしょうか？ と睨む様に森を凝視する。
「――単刀直入に云うがね、津島君」
森はやっと口を開いた。
「君を二週間程前から監視していた」
「……そうですか」
心底興味が浅そうに応えた津島だが、実際興味が無かった。
津島が辺りに居る普通の未成年であれば、退屈過ぎて唾をぺっぺと吐いていただろう。
「その様子だと、矢張り気付いていた様だね」
「多少は。然し、人選は間違っていなかったと思います。気付いたのは丁度監視開始後五日後ですもの」
「が、君に尾行させる事に関しては、人選を間違えていたね」
ふっと森は笑みを作った。
両方、微笑を浮かべていたが、何処か不穏な雰囲気であった。
「それで何故私にその様な報告を？
態々私に話す様な話でもありませんし、抑私を監視する意味も分かりません」
如何わし気に森を見詰める。
「先ず……私が君を監視させたのは、他でも無く君が気になったからだ。君はまだ青二才な少女だからね。心配だったんだよ」
「ご冗談を。そこ迄貴方は良い人では無いでしょう？」
「……そうだねえ。然し、君が気になったと云うのは強ち間違いでは無い。
私は君に初めてあった時、君の異能、その他の才能を見込みポート・マフィアに勧誘した」
「……」
――君は何の証拠も無く人を殺す才能と、その荒々しい異能を持っていた。
そして他にもあらゆる闇社会において活躍する技術にも異才があった。
津島は、微笑していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雑草と花(プロフ) - 切なくて素敵です……！エモい…！ (2020年5月25日 16時) (
レス) id: 157490c8f1 (このIDを非表示/違反報告)
Tukimi(プロフ) - ユナさん» はいっ！ありがとうございます！！(間違ってたらスイマセン…。) (2017年4月27日 21時) (レス) id: 92c302cc08 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - Tukimiさん» 承知致しました。更新する際に紹介させて頂きます。ありがとうございました！ (2017年4月27日 21時) (レス) id: 8f8a6b3fb6 (このIDを非表示/違反報告)
Tukimi(プロフ) - ユナさん» えっと…。作品のURLは、http://uranai.nosv.org/u.php/novel/Painted/ ですっ！ここれを載せてくれれば私の作品にとんでいけます！ (2017年4月27日 20時) (レス) id: 92c302cc08 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - Tukimiさん» 全然大丈夫ですよ。というか、お仕事早い……(( (2017年4月27日 20時) (レス) id: 8f8a6b3fb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユナ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年4月5日 14時
