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月明かりに照らされながら、俺は自室の前の廊下に座り、寝巻きを上半身だけ脱ぐと右腕を見ていた。
俺の右腕は文字で埋め尽くされている為、普段は包帯を巻き隠してる。
夜や1人になった時だけ、今のように包帯を取り、眺めている。
貴(こんな事をしてても、なんの意味もないんだけど
ね。)
視線を感じ顔を上げると、沖田がそこに立っていた。
その表情は驚いたような、恐れているような感じ。
沖「君、女の子だったの?それに、何その腕...。」
貴「バレてしまいましたか...。隣、どうぞ。」
沖田は素直に隣に座った。
その間に腕に包帯を巻き、着物を直す。
貴「あなたの言う通り、俺は女です。黙っていてすみま
せんでした。」
沖「なんで、性別を偽ったの?」
貴「...少し、昔話をしてもいいですか?」
沖田が頷いたのを見て、俺は話し始めた。
貴「俺は小さい頃、記憶をなくしさ迷っていた所を、父
と母、姉に拾われたんです。日々を過ごしている内に
自分が里の周囲に結界を張り、鬼の侵入を防ぐ役目を
負った、「神垣ノ巫女」という存在だと思い出しまし
た。」
沖「鬼...?」
貴「俺が元々いた世界では人を喰らう「鬼」という化け物
がいました。その鬼が起こす時空の歪みに巻き込ま
れ、神隠しにあったと自分では思っています。その事
を知ってもなお、家族は俺を見捨てず育ててくれまし
た。本当に、本当に幸せな日々だった。」
もう二度と戻らない日々、それでも昨日の事のように思い出せる。
その幸せがずっと続くと思ってた、あの日がくるまでは...。
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作者名:咲耶 | 作成日時:2017年4月10日 17時