検索窓
今日:12 hit、昨日:4 hit、合計:52,042 hit

44 ページ44

沖「...すぐに、治まる、から...!」
沖田の口ぶりは、まるで今まで何度もこの苦しみを経験しているように聞こえた。
貴「...沖田」
これは...吸血衝動だ。
貴「血が、欲しいのか?」
沖「欲しくなんかない!」
沖田は怒鳴るように即答した。
沖「...僕は、嫌だ。嫌なんだよ。血は要らない、狂いたくない...!」
貴「でも、苦しいんだろ...?」
沖「自分を、理性を失ったら、僕は近藤さんやA君を守れなくなる!」
貴「あ...。」
沖田は戦うために変若水を飲んだ。
彼の願いは局長や俺を守ること。
血に狂ってしまえば、残る自分を失ってしまえば、唯一の願いすら果たせなくなる。
だから...
貴「ずっと耐えていたの...?」
ひとりで、誰にも言わず。
まともに息もできないくらいの苦痛を、耐え続けたの...?
沖「大丈夫だよ。発作くらい我慢できる。僕はこんなものに負けるほど弱くない。」
貴「...全然、大丈夫そうに見えないよ...!」
俺はどうすればいいの?
薫『鬼の血を与えればいいんだよ。』
あの言葉を信用したわけではない。
でも俺が血を与えることで、沖田の苦痛が和らぐならためらう理由は何一つない。
俺は刀で自分の腕を切った。
貴「っ...!」
鈍い傷みが走り、真っ赤な血が滴る。
沖「A君、なにをー」
貴「飲んで。」
驚きに目を見開いた彼の前に腕を差し出す。
貴「俺は鬼だから、こんな傷すぐ治る。俺、沖田の助けになりたい。だから...」
沖「...ごめん。」
沖田は俺の腕をとり、傷に障らないよう慎重に血を舐めとった。
沖「...ありがとう、A君。」
苦しげに俯く沖田。
まだ少し顔色が悪いけど、発作は落ち着いたみたい。
髪や瞳も元通りの色に戻り始める。
貴「...今日はもう休んで。」
沖田は頷くと素直に布団に潜り込んだ。
貴「沖田...。」
彼の気持ちを思うと胸がきしむようだ。
でも、彼の苦痛は和らいだ。
その事実が何よりも嬉しかった。

45→←43



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (16 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
40人がお気に入り
設定タグ:薄桜鬼 , 討鬼伝 , 沖田総司
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:咲耶 | 作成日時:2017年4月10日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。