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あれから沖田はほとんど寝たきりの状態。
怪我はまだ痛むようで、身体を動かすのも辛いみたい。
俺を庇って沖田は銃弾を受けた。
人間だったら間違いなく死んでた、生きてるのは奇跡のようなもの。
でも、沖田は羅刹なのに傷が治らない。
沖「う...」
貴「沖田...?」
沖「ぐっ...うぅ...!」
貴「沖田...!」
沖田は起きた状態で傷の痛みと戦ってる。
貴「...。」
額に浮いた汗を、濡らした布で拭う。
痛みが和らげばいい...、もう満足に治癒力を使えない俺にはそう祈ることしかできない。
震えている沖田の指先を包むように握りしめる。
貴「ぁ...」
沖田の瞳が俺を捉える。
貴「具合はどう、沖田。」
沖「うん、昨日よりは楽になったかな。」
貴「...無理してないか?」
沖「大丈夫だよ。もう日は暮れた?」
貴「あぁ。...起きる?」
沖「うん、寝たきりだと身体も鈍るからね。」
傷に障らないように注意しながら、起き上がろうとする沖田を支える。
沖田は少し沈黙してから視線を改めて俺に向けた。
沖「あのさ、A君。」
貴「ん?」
沖「聞きたいことがあるんだけど、いい?」
貴「え...?いいけど...。」
沖田は柔らかな笑みを浮かべる。
沖「僕が目を覚ます時、いつもA君がいるのは何で?」
貴「...。」
沖「何で?」
貴「...だめ、なの?」
沖「もう、そうじゃなくてさ...」
沖田は俺の頬を両手で包み顔を覗き込んだ。
沖「A君、ほとんど休んでないんじゃない?」
貴「...そんなこと、ない。」
沖「じゃーなんで目逸らすのさ。」
貴「...それは」
何とか誤魔化そうと思って言葉を探し、口を開いた時ー
崎「嘘です。」
俺の努力を裏切る、凛とした声が響いた。
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作者名:咲耶 | 作成日時:2017年4月10日 17時