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土「A、いるか?」
貴「はい。何か御用ですか?」
土方さんが訪ねてくるなんて、何かあったのかな。
土「...もうすぐ新選組は左腕をなくす。そしたらお前の力を借りる事が多くなる、よろしく頼むぞ。」
貴「承知しました。」
左腕...、斎藤か。どこかへ行ってしまうのか?
斎「雨宮、いるか?」
貴「斎藤、いるよ入って下さい。」
斎「失礼する。」
珍しく斎藤が俺を訪ねてきた。
今日は珍しい人がくるな。
貴「どうしたんだ、斎藤が訪ねてくるなんて、何かあったのか?」
斎「...伊東さんが離隊しようとしている。俺は動きを探るため長期の単独潜入をする。」
貴「不安か?」
斎「...あぁ。離隊には平助もついていく。俺は任務として平助も取り戻さなければならない。」
貴「斎藤は任務だから平助を取り戻すために動くのか?」
斎「なに?」
貴「任務だから、じゃなくてさ。斎藤自身はどう思ってるのか、それが1番大事なんじゃないの?斎藤だって1人の武士だ、その体は任務のためだけに動くものじゃない、自分の意思で動くもの。斎藤はどうしたいの?」
斎「俺は...平助を取り戻す。これは俺の意思だ。」
そこまで言うと斎藤は不意に顔を上げた。
目の先には大きな桜の木があった。
斎「何度目だろうな、こうして京で見る桜も。時が映ろう中で様々なものが変わっていく、世の動きも思考も...そしてこの新選組も。それでも何もかもが変わってしまう訳じゃない。俺は変わらないものこそを信じている。」
貴「変わらないもの...。ちゃんと持ってるじゃないか、自分の意思を、信じるものを。これから先時代は巡って変わらないものの方が少ないと思う。でも斎藤の中にある新選組は変わらないだろ?」
斎「あぁ。...不思議だな。お前といると己の意思が見えてくる。俺がどうしてここにいるのか、それを思い出させてくれた。礼を言う。」
斎藤の目には光が宿っていて、口元には微かな笑みがあった。
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作者名:咲耶 | 作成日時:2017年4月10日 17時