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酔いさましと称し一つの部屋を貸してくれ、俺は今そこにいる。
戻ろうにも娘姿のままじゃ戻れないし。
貴「皆さんのとこに早く戻らないとなのに。」
皆さんがいる部屋からさほど離れていないのか、楽しそうに騒ぐ声が聞こえてくる。
貴(昔は俺もあんな風に騒いで、楽しく暮らしていたのにな...。)
ぼおっとしていると体を急に引っ張られ、壁に押さえつけられ逃げられない状態にされてしまった。
誰かと思い顔を上げれば、それは沖田だった。
貴「沖田?!なんでっ...」
沖「君こそ娘姿になって何してるの?」
貴「こ、これは...君菊さんが...。」
沖「ふぅん...。ねぇ、この状況何とも思わないの?」
貴「...近い。」
沖「そうだけど、そうじゃなくてさぁ。君って意外と鈍感なんだね。」
貴「な、なんだよ。」
沖「まぁいいや。で、何考えてたの?皆のいる部屋の方見て、羨ましかった?」
貴「それは...、わからない。」
沖「わからない、ねぇ。ごめん、苛めすぎちゃったかな。」
そう言って沖田は離れて部屋を出ていこうとした。
貴(まだ、2人でいたい。また前みたいに包んでほしい。)
パシッ
考えるより先に体が動き、沖田の手を掴んでた。
沖「A君?」
貴「...もう少し」
沖「え?」
貴「もう少しだけ、そばにいて欲しい。...ダメ、か?」
消えそうな声でもちゃんと届いたようで、沖田は驚きでか顔を赤くした。
でもすぐにいつもの調子に戻って
沖「全く、どこでそんな技覚えたわけ?仕方ないから一緒にいてあげるよ。」
俺を引き寄せて、肩に顔を埋め背中に手を回した。
俺も沖田に体を預け、心地良さに浸った。
貴「沖田は優しいな、誰にでも。」
沖「そんな事ない、A君だからだよ。」
貴「そうか...?...ありがとう、沖田。」
沖「どういたしまして。」
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作者名:咲耶 | 作成日時:2017年4月10日 17時