三味違う、弍 ページ10
Aは よ、っと云いながら与謝野と賢治の隣に座りながら、はて?と首を傾げた。
「ん、皆肉まん食べただろ!」
くん、と鼻を鳴らして云った。
今食べているのは賢治だけだが、鼻の善いAのことだから、判ってしまったんだろう。
何も反論も抗議もない周りの顔を見て、Aはむむ、っと幼く辺りを睨んだ
「えー、狡いー私も食べたかった」
だが、様々な難事件やら難関問をくぐり抜けてきた社員達にそんな子供っぽい睨みなど、怖くもなんともない。
まあ、だからではないが、首をすくめて
「善いじゃないかい。それぐらい。どうせいつも通りAも道草食ってきたんだろう?」
「う゛」
「しかもそれで遅れて帰ってきた。違うのかい?」
「ああ、そう云う事云う晶子ちゃんー」
因みに道草というのは、彼女の__正確には彼女等の__好きな寄り道。仕事後の駄菓子屋、飯屋、甘味屋巡りの話だ。
勿論全員が承知のうえだ。
何故って、誰と依頼に外に出ても行くものだから、Aと行くと帰りが遅くなる。というのが探偵社にある常識である。
だから、
「まあ、その通りだから善いんだけど。で」
けろっと肉まんの話を棄てて、白板に目を向ける。
其処に書かれた言葉を見ながら
「全然意味判んないな」
そこに居た一同そりゃそうだろう。と頷いた。
前半は善いとして、中盤から後半に掛けては見ただけでは判らないものだろう。
「どうでしょうかAさん、何か案はありますか?」
太宰はにっこり笑ってこれまで通りAに意見を求めた。
だが、これ以上個性の強すぎる素っ頓狂な意見が増えたらどうするのだろう。だってAさんである。
確かに常識人ぽいところはあるし、本人も自分が常識人である風に振る舞う部分もある。だが、しかしAさんであるから!
そんな視線が向けられたとは露知らず、Aは少し首を傾げて
「誠実さとか真面目さだとか、探偵社に相応しい人間だと判ればいいんだよね?」
「はい、そうですね」
「じゃあ、誰かと鬼
おや?と全員がAを見た。思った以上に可愛らしい内容であって。と、云うより
「ですがAさん。其だけで試験とするのは・・・」
「うん。だから、虎少年が逃げる方で、私達が追い掛ける方」
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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時