三味違う ページ9
肉まんを食べながら、一同はしばし黙考した。
このままでは埒があかない。
何の事かと云えば、
先日太宰が保護した少年__災害指定猛獣、白虎となる異能力を持った__中島敦の入社試験についてだ。
如何してそんな事に成ったのか。
それはまあ、なんだ、成り行きとは少し云い難い。
人食い虎捕縛の依頼が探偵社に舞い込んだ。畑の作物を荒らし、倉庫を壊し、好き放題なるその虎。
其を捕獲するため市内を奔走したのが探偵社の調査員、国木田と太宰である。
丸一日、主に国木田が働きかけ、働きかけ、働いた。
が、しかし蓋を開けてみると、虎の正体は孤児院から追い出され浮浪していた少年。中島敦であったのだ。
彼が虎に変化するという異能力を持っていた。というもので
と、
まあ。其処までは善かった。
何の問題もなく、少年も無事保護できたのだから、むしろ完璧であった。
が、しかし、あの太宰が平常通りというか、唐突にというか、敦を
「うちの社員にする!」と云い出したのだ。
其処からは、そう、なんとなくトントン、トン。と進み、現在。
探偵社入社試験の試験内容に頭を悩ませていたのだ。
本人達も己が会議に向いた性格でないことに薄々感づいている。
悩み始めてかなり時間がたったが、そろそろ落としどころが必要だ。
会議内容は白板に黒い文字で
『依頼解決ノ合否』『社内ニ於ケル厄介事ノ解決』『豊臣秀吉』『八本捥グ』『アルハラ』『太宰ヲギュウギュウ』『○○ヲ××シチャウ』『肉饅オイシイデス』
と書かれていた。
そんな様子を見て谷崎はややげんなりした。
半ば判っていたことだが、こんな面々を揃えて意見を一つに纏めるなんて、どれだけ困難な事か。
却説、どうしたものか。と思ったところで
「あー遅くなってごめんー」
沈黙を破ったのは、聞き慣れた声だった。
「Aさん、遅くまでお疲れ様です」
「うん、ごめん国木田。国木田の方がお疲れ様」
群青色の瞳を少し伏せて、ごめんね、ともう一度云ったのは林Aだ。
そんな姿はまるでまだ将来を夢見る十代半ばか後半かの少女だが、この場に居る人間の中なら最年長者である。
最年長と云いながら、見せる仕草も矢張り子供じみているところもあるが、其でも
「A、こっち座んな。まだ会議も半ばだよ」
「あ、そうなの?もう終わって、晶子ちゃんと呑みに行こうと思ったのに」
時折見せる言動で、『嗚呼、この人成人してたな』と思わせる事も多々あるのだ
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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時