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二味違う、肆 ページ8

先刻迄は無かった其の違和感と殺気が辺りに溢れ出す。

ビリリと広がった其の咆哮に全員が体を強張らせた。


「ッ・・・」

が、



「こ、れは・・・、如何するのが」


正解、江戸川?

と、私が云う前に国木田がハッと此方に意識を戻した。


「くっ!一体何処から・・・っ!」


そんな事を呟いて走り出そうとした国木田

が、その腕を私は掴む。


「??!」
「江戸川、如何すれば善い?」


何だと云われる前に、口を開くいた。

云う間にも、虎の咆哮と何かが壊れ崩れる音は続く。

だが、太宰の指示は虎が出るから周りを固めろ。と、虎を逃がすな。という事に成っていた。


虎を捕まえろじゃあない。



却説、では此処で虎の方へ動くのは正解であろうか?


周りを囲わず、虎の処に行く事は合っているだろうか?



考えた処で答えが出ないのは明白だ。
だって考えるのは私の分野じゃないし。



それに江戸川はどうせ判っているのだから。




私の云いたい事は全員に伝わった様で、晶子ちゃんも賢治くんも江戸川を見た。




全員の視線が自分に集まった処で

「ふぅん」



にこり、と云うにはあまりにも意地悪気な其の笑みは完全に何か企む・・・いや、江戸川にすれば確信した笑みであった。

「う゛、わっ。そ、れは」

詰まる処、あまり私にとっては喜ばしくない笑みだ。
何か要求する為の。断らせない為の。







「ま、今夜は疾く帰りたいからね。」




ぱっと、そんな顔を止めて幼いと云うか、邪気の無い、と云うか。そんな顔に戻って、まあ。と私を見た。





「そろそろ、だろう」





蒼い月


其を背に江戸川はそんな事を云った。





今日は美しい満月である。



何時の間にか辺りは鎮まり返っていた。

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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時

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