八味違う、惨 ページ38
「あ、生憎、今日は私が強かったね」
乱歩が云った様にAは『頭を使うのは自分の分野では無い』と自負している
だから、乱歩と口で云い争っても勝てないし、謎だって解けるわけもない。
言葉遊びも同様だ
だから、現在乱歩が気がついていてAを与謝野に引き渡すなら、誤魔化すなんて無理は話だ。
だからと云って、Aも引くわけにはいかなかった。
もしここで引き下がったら?否否、待っているのは寝台と云う名の解体台である。
だから
「そんな訳で今日は帰ろうかな!!賀川さんに報告書は来週でも善いって云われてるし、私疲れたから」
賀川の件?勿論嘘だ。
だがこうでもしないと逃げられない。
否これでも逃げられないかもしれないが、解体台に行くまでの時間を出来る限り稼ぎたい。あわよくば逃げたい。
「へえ」
嗚呼、これは気がついていている
「だから、まあ、江戸川には悪いけ____ 」
「僕、Aがそんな上着着てるの初めて見たんだけど」
「ひ、」
Aの肩がびく、っと跳ねる。
黒い外衣は賀川の部下から剥いだものだ。その下の緊急事態を隠すために。
「これは、賀川さんの部下、に貰ったんだよ、先刻の現場での返り血が一寸・・・よろしくなかったから、」
嗚呼、血が圧倒的に足りていない。先刻まで押さえ付けていたからまだましだったけれど、江戸川の問い詰めに、与謝野の解体に、血の巡りが無駄によくて。
「ふうん、・・・ま、そう云うならそれでも善いけど」
刹那、安堵したAだが、それは本当に刹那だった
『ジイイイイイッ!』
「まっ!!」
「たない!」
躊躇い無く一番下まで下げられた外衣の
露になった
「え、あ、あ、」
其の時の彼女の目は、完全に絶望を映していた
「ふうん、今日は随分と個性的な寛衣を着てるんだね。Aが赤い服着てるのなんて初めて見るなあ」
誤魔化し様の無い所まで来てしまった。
だがAは一度、『今日は私が強かった』と怪我をして無いという
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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時