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七味違う、玖 ページ34

「お疲れ様です」
「お疲れ様です」


背広をきっちりと着た男にAはペコリと頭を下げた



「林さんのお陰で被害総数が零という素晴らしい結果をおさめられました」
「其は善かった、此方も仕事を頂いた事感謝します」



ニコリと微笑んだAだったが、その笑みの少しの歪さと、後ろにいた見慣れぬ少年の表情に



「林さん、まさか其は林さんの血では・・・」


寛衣の赤さと鮮明な血の香りが男に怪訝な顔をさせた




返り血を浴びて帰って来る事がたまにあるAだからこその質問であるが、


「は、は、ははは、うんね、まあね、今日の重症者一番(ナンバーワン)は私かもね、賀川さん」




『賀川』と呼ばれた若い男は刹那目を見開いたが、ひどく焦った様に後ろにいた男を呼びながらAに怒鳴る。


「何故もっと疾く云ってくれないんですか?!云わなきゃ対応ができないでしょう?!」
「そういえば彼等薬使ってたからそっち方面も洗った方が善いかもね。」
「情報有り難う御座います!」



ヘラ、と微笑みながらAは寄ってきた男の外衣を剥いだ


「これ貰いますよー、賀川さん。彼にもっと善いものを買ってあげて下さい」
「はぁ!?」
「報告書は後で上げます。あ、あと、彼は新入社員の中島敦くんです」


「あ、な、中島敦ですっ!」


たったかと、形振り構わず勝手に話を進めて外衣に腕を通しきっちり前を閉じた




「林さん!」



怒った様に云う賀川だが、彼女に届く言葉なんて

「はいはい、じゃあ後始末お願いします、お疲れ様でーす」




まるで授業終わりの高校生かのように、晴れやかに云って くるりと踵を返す。

紺色の髪は黒い外衣にも紛れない。

た、た、た、と歩くAの後ろ姿にはまさか脇腹に穴が開いているとは思わせる心配な感情は起きなかった。




「あ、一寸!」


賀川の焦った声と、外衣を剥がれた男の寂しげな視線だけが彼女の背中に向けられた

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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時

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