七味違う、肆 ページ29
「成る程、そう云う事ですか?」
「一例だと先にお断りしましたしね」
Aは笑って否定も肯定もせず、出されていたお茶を飲む。
「まあ、別に何でも善いんです。そんな理由なんて。ね?そうでしょう?お兄さん」
全て飲まれたお茶を満足そうに男は見て、敦の方も見た。
これは、恐らく貴方もどうぞ?と云っているのだろう。流石に空気は読めるので、手を伸ばそうとして
「敦くんはやめた方が善いかもしれないよ。だって熱い緑茶は苦手でしょ?敦くん。」
「え、あ、」
「いいんだよ。無理しなくて」
「はい」
どういう意図か判らなかったが、恐らく飲むな。という意味だろう。
敦は頷いて手を膝の上に戻す。
「温かいものは駄目でしたか。それは申し訳ないですね。すぐに冷たいものを・・・」
席を立とうとした男だったが、
「否、善いです。だって、そんなに長く話そうなんて思ってもないんでしょう?」
Aが遮って冷たく笑った。
唐突に変わった彼女の雰囲気に、男は戸惑ったように座り直した
「どうかなさいましたか?」
「先刻も云いましたけど、あれは一例。却説、私達が此処に来た理由。必要でしょうか?」
「え、あ、それは一体・・・」
崩れぬ笑みにAは敦の前に出されたお茶を持って
「薬なんて入れておいて、よくまだしらばっくれる事ができるな」
瞬間、奥から勢いよく数人の男が出てきて耳をつんざかんばかりの音が店内に響いた。
それが銃から溢れた発砲音だと敦が気がつくのは、Aが目の前の机を蹴飛ばしてからである。
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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時