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七味違う、惨 ページ28

店内は質素な造りであった。

置かれた寝椅子(ソファ)と、店員と客の間に大きな机。
奥には一応まだ部屋はある様に見えるが、一般に迷いこんだ人間が入れるのはここまでの様だ。


見たところによれば、表向きこの辺りの空き住居管理、そして紹介もしているらしい。


本当かどうかは知らないが



「それで?お客さんはこの辺りは初めてですか」


顔立ちの整った背広の男がにこりと微笑む。
ほの暗い店内で、Aは目を細めた



「初めてだと何か善いことがあるなら、そういうことにしておきたいですね」


そんな様子に男はやはり微笑んだままだ




「この辺りに部屋を借りたいなんて物好き、土地勘がある方ならいませんからね」




「そうですか?でも判りませんよ?何か事情があってここに来たのかも」




意味深に細められたままの紺色の瞳は、暗い店内では黒く見える。



「ほう、そんな理由なんてありますかね?」




男はまだあくまで無実潔白の一般人を気取っているかのような、演技がかったしゃべり方をする。




「土地勘がある者はこの辺りに来ないと云ったでしょう?だから、それを理由にここの辺りに住みたいとか」



そんな言葉にやはりまだ演技が続く



「それは困りましたね。それが警察のお世話になることなら、うちではお引き受け致しかねますよ」






「なにも、犯罪だなんて云ってませんよ。例えば・・・そう、駆け落ち__とか」

思ってもみなかった言葉だったのか、男は一瞬動きを止めた。
敦は吹き出しかけて、Aに見られて思いとどまる




「私ってかなり幼く見られますけど、これでも二六なんです。もういい大人。でも、彼は」

にっこり笑われて敦は内心焦る。
ここで何と云えば正解かは聞いていない。



いや、正直もう少しどう云った作戦なのか聞いておきたかった。もう、どうしたら善いか判らず


「じゅ、十八です」


思わずそのまま云った。


「ね?判るでしょ?お兄さん。これがどう云う事なのか」

言葉をそのまま紡いだAを見る限り、間違いでは無かったようだ。




敦は緊張しながらも男に視線を戻せば、少し男が笑った様に見えた。

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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時

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