六味違う、弐 ページ25
「これからは気をつけて下さいね」
「本当にありがとうございました」
ぺこと頭を下げて、依頼人は抹茶を抱いて帰っていく。
抹茶を無事引き渡せたので、私の外での仕事は終わりだ。
______後は帰って報告書を作る・・・
私は今考えたことを無かったことにして、
「社長、帰りましょう!」
隣に並ぶ。
ふむ、社長と二人とはなかなか無いものだ。基本的に江戸川と、が多いから
後で江戸川に自慢できるな!
なんて小さく笑っていると、視線を感じたのでそちらを向く。
「社長、今社長が思ったこと当てましょうか」
私はニヘ、と笑い返事を待たずに云った
「Aも依頼人としっかり話せるほど成長したか!」
でしょう?と、最後を紡ぐ前に社長はぽん、と私の頭に手を置いた。
「え、」
「乱歩は変わらないものだ」
そ、れ、は・・・、つまり??
「大きくなったな。A」
「も、もう・・・26ですから」
誉められてしまった。
嗚呼、社長に誉められてしまった!!
これはまずい!本格的に江戸川に自慢しなくてはいけない!!!
「これからも邁進していきます!!次は、列車!!列車に一人で乗れるようになります!!」
誉められたからには頑張らなくてはいけない!
と、少し先に菓子を詰め込んだ紙袋を抱えた江戸川が見えた。
駄菓子屋帰りである。いつもなら完全に荷物持ちとして利用されるので見なかったことにするが
「え、ど、が、わッ!!」
「嗚呼、丁度善い処に来たねA!どうせ探偵社にかえるところだ・・・」
「そんな事より!聞いて!私ね!社長に誉められた!」
遮って云っただけあってか、刹那江戸川はきょとんとして、振り返る。
そこには私と違って歩いて来る社長がいて
「っ、はぁあ?!なんで!!?社長、Aなんかよりも僕の方が頑張ってるし!」
「そうやってすぐ怒る処が私と違って!子供なんだな!」
ギャア、と辺りは一瞬で騒がしくなる、
気持ち良かった静寂はもうとっくに昔の事だ。
僕の方が!と云う江戸川を挑発するように笑って、私は紙袋を上機嫌に受けとる。
結局、探偵社に着くまで江戸川は自分の素晴らしさを身振りを入れて説いていたが社長は何とも云えぬ表情で江戸川を見ていた。
私は得意気に笑って江戸川を煽り続けたので、二日間口をきいてもらえず、かなりこたえた。
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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時