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六味違う ページ24

「んなァー」

「ん、はい。」


どうやらあげた煮干しは気に入ったようだ。
灰色の猫はたったった、と煮干しを咥え帰っていく。
非常に可愛らしいものである。


もう一匹の茶色の猫は私の座る長椅子(ベンチ)の上でお休み中である。

こちらもまた可愛らしいものだ。




ぽかぽかと温かい日差しを受け、自然と目が細まる。

気持ちいいなァ




決してサボっている訳ではない。


そういう依頼である。

いなくなった猫を探してくれ。もしかしたらあの虎に喰われたのかもしれない。

そういう、あれで、

今は依頼人がこの猫を引き取りに来るのを待っている。

そういう、これだ。



そして、見つけたのは今隣で気持ち良さそうに眠る茶色の猫。名は『抹茶』である。



「抹茶くん、君はいらないのかい?この煮干し」


抹茶の目の前に煮干しを差し出してみるが、この猫は全く見向きもせず目を伏せたままだ。




それに笑って私は抹茶の背を撫でた。少し目を開いたが、すぐに閉じ、黙って撫でられる。



ひどく平和で静かな昼下がりだなァ


眠くなってしまいそうだ…。と私は欠伸を噛み殺そうとしたとき




「んぁ!しゃ、ちょ、社長!」


猫を逃がさないように右手で制しながら、公園の向こうの道を歩く社長に手を振る


これぐらいの距離だ。勿論 社長は気がついてこちらを向いた。


何処かに出掛けた帰りであろう。歩く先は探偵社のある方向だ。だから、私は猫を抱き上げ社長の方へ駆ける。



抹茶は初め厭だと私に爪をたてようとしたが、抱き直せば落ち着いたように静かになった。




「Aか」
「社長、探偵社に帰る途中ですか」


云う私を特に感情の見えない表情で見て、そのまま下に視線を動かした。


鋭い眼孔で見られた抹茶は怯えるかと思ったが、静かに私に抱かれたままだ。
なかなか肝が座っているか、悠々自適(マイペース)なのか。いやァ誰かさんを彷彿とさせるなァ!!


「抹茶という名の依頼人のご家族なので、丁重に」


笑って社長に見せれば、どこから出したのか社長の手にはもう煮干しが握られていた


まあ、この猫は食いはしないが。




社長は少し残念そうに(表情は読めないから、本当にそうかは知らない)して、ふと視線を上げた。


「嗚呼、抹茶。御主人がきたっぽいよ」



私も振り返って依頼人に微笑む

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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時

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