五味違う、弍 ページ21
「お帰り国木田、晶子ちゃんも満足した?」
「只今戻りました。役に立ちそうな他の資料を一応持ってきました」
「満足してないって云ったら、Aが怪我するのかい?」
「ごめん」
私は目を閉じて谷崎に同情した。
お疲れ谷崎
有難う谷崎
却説、仕事しよう、仕事
ぺらり、と紙をめくり、ふと気がつく。
「あ、ねえ。そういえば私新人白虎少年としっかり会ってない。」
自分の名前をしっかり紹介してない気がした。
まあ、別に流れでそれでも善いけど。
「白虎少年は?」
「ああ、あの小僧なら先刻何処かに出てきましたよ」
「・・・、ねえ新人の癖に仕事サボるのはよろしくないと思うけれど」
仕事が多いのは事実なのだから、正直手伝ってほしかった!
行動が第二の太宰ではないか!
よしてあげてくれ。
仕事が増えるのは国木田なんだから
私は同情の意を込めて国木田を見た。
これからきっと、もっと仕事も増えるだろうに。
仕事をサボって出かける新人と仕事をしないで嗜好に走る同僚
ああ、止めよう。
同情で仕事を手伝いたくなってしまうではないか。
江戸川がご機嫌に私の隣に座ってこれ見よがしに駄菓子を食べ始めたが、そんなのが霞むほどの同情が湧いてしまうから、
私は江戸川の駄菓子を一つ空け、国木田に慰労の言葉を掛けようとするが
「、ん」
どうやらそれどころじゃ無いようだ。
「江戸川、これ貰うから」
「え、厭だけど」
「有難う」
包装を開きながら、私は国木田を見上げて
「国木田、なんか来るよ」
「は」
国木田が不審気な声を上げるのと、扉が吹き飛ぶのは同時だった
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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時