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三味違う、伍 ページ13

「それほど腹の立つことはない!」

そんな云い分を聞けば、Aの云い様は可愛いものだと思ってしまう。


「残りがないかナオミに訊いてきましょう」

谷崎は小走りで乱歩の横を抜け、会議室の扉を開いた。

横を抜けるとき、乱歩は奇妙に表情の消えた目で谷崎をじいっと見た。それから室内を見て机の隅に畳まれた古新聞を見た。

「谷崎君」
出て行こうとする谷崎に、乱歩は声を掛けた。

「はい?」
谷崎が振り返る。
乱歩はすぐに何も云わずにふらふら頭を動かしていたが、やがて
「まあ____頑張ってね。」
と云った。



谷崎が出ていくと、乱歩の言葉に各々首を傾げた。

「江戸川、何それ?どういう意味?」
乱歩にそんな事を訊こうと思えるのはやはりAだけだ。

「全然意味が_____」

と、そこまで云うと
「そんな事よりA!!」
「はい」


唐突に乱歩がAの方へ振り返る。

「僕が一番怒ってるのはAにだよ。折角少しずつ少しずつ砂糖が割れない様に、僕が頑張ってた砂糖の型抜き!」

「ああ、あの何とも言えない蝶の形のやつ?」

「そう!折角できたからAに見せてあげようと思ったのに、顔を上げたら何でいないのさ!肉まんの香りでお腹がすくから、Aに見せる前に食べちゃったじゃないか」

「ええ、知らないけど。というか会議室行くってちゃんと云ったけど」

「云った?云ったって僕が返事してないのに、云ったっていうの?それは云ったって云わない」

「屁理屈だろそれ!聞いてて返事しなかったんでしょしかも!」


わあ!っと五月蝿く成った会議室だが、その喧嘩を止める者はいない。

平常通りであるし、何よりこの二人の喧嘩に口を出そうとは思わない。口を出して後に何があるか判らず恐い。

乱歩はAを睨み付けて、不機嫌そうに云い放った


「じゃあ、肉まんはAの奢りだから!」
「ええ?何でそうなるの」

そんな言葉に呆れたAだが、乱歩はうん。と頷いて

「肉まんを食べて帰ろう!どうせ明日は疾いんだ。A帰ろう」

いつまで座ってるんだ。
「ええ、今日は晶子ちゃんと呑みに行きたいんだけど」
乱歩の言葉にAは気だるげに云う


明日から出張であるというのに、今から呑みに行こうとしているAに与謝野は苦笑した

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作者名:きゅういち | 作成日時:2019年1月19日 16時

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