◇ ページ46
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「あの、ごめんなさい……神河くん__」
「この見た目になってもダメなんですか….…」
「えっ?」
「そうですよね、Aさんは俺の事何も知りませんもんね」
どんどん話を進める神河くん。私は訳が分からずに言葉すらも出なくなった。独り言を話していると思ったら、こっちを向いて口角を微かに上げた。
「俺、Aさんの事なら何でも知ってますよ?」
「え……」
「家族構成、通っていた高校や大学、好きな食べ物も苦手な食べ物も、あと……住んでる場所とか」
思わず、私は後ずさりしてしまう。なんで全て知っているのか、ましてや住んでる場所までなんで、と思った瞬間。
「あーその顔、そういう顔が好きなんですよ(笑)」
スマホのカメラを向けて突然写真を撮った。
どうしよう、いざって時に声が出ない。入口のドアに視線を移すと、中が見えないようにするカーテンが閉められている。
「なんでこんなこと__」
「なんで!? あんたが俺の方を振り向いてくれないからだろ! 俺はあんたをずっと見てきた、大学生の頃から!」
「大学生の、頃から?」
確か神河くんはこっちの大学に通っているって、バンドを組んでいるって……もしかして、全部嘘?
「なんで俺じゃダメなんですか? A先輩に好きになってもらえる様に頑張ったのに! なんで!?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「覚えてないですか? 俺、先輩に何回も告白して、先輩に何回も振られたんですけど」
泣きながら笑う顔に、見覚えがあった。大学生の頃に、新しく入ってきた1年生の後輩が何回も私に告白してきたのを覚えている。
当時、大学もゲーム実況もバイトも忙しかったので、恋人を作るという考えが全くなかった。それに、同じ学部というだけであまり言葉を交わした事だって無かった。
彼は当時と今じゃ全く別人の雰囲気がある。
名前は確か……
「神島……将也くん?」
「っ! やっと思い出してくれたんですか」
「どうして__」
「好きだからです。でも、周りの男が邪魔でした、先輩だって周りのせいで俺と付き合えなかったんですよね!?」
直感的に逃げなきゃと思い、扉の方へと隙を見て走る。しかし途中で手を掴まれた。
「どこに行くんだよ!」
「離してください!」
「やっと2人きりになれたのになんで逃げんの?」
手首が折れるんじゃないかって位の力で、彼は私の手を掴んでいた。
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作者名:明 x他1人 | 作成日時:2019年12月26日 13時