敬語系実況者5【最終兵器俺達】 (ページ19)

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69.大切な人の、大切な人達ページ19

・A弟

今日はキヨさんとレトルトさん主催のライブが行われる。ありがたいことにキヨさん達に招待してもらったので、北海道から向かう事に。実は兄さんも元々一緒だったけど、仕事が急遽入って一緒に来れなくなったのだ。

ライブが始まると同時に、歓声が会場中に響き渡り、色んな意味で心臓がドキドキしている。全く身にならない日々から始まったライブは、笑いが絶えない。

ゲストが出てくると、これまた歓声があがる。その中に姉さんも含まれていて、姉さんの活動名を呼ぶ声も多く聞こえた。

あぁ、こんなにも姉さんは人気なんだな。姉さんだけじゃない、このライブに出演している方々は皆さん人気で、このライブに参加している人達は舞台の上に立つ個性的な6人が好きなのかもしれない。

色んな企画をやる中で、時間を忘れてしまう程に面白かった。そして、会場が暗くなりそろそろ終わるのかなと思っていたら、スポットライトが舞台の中心を照らす。

そこに立っていたのは、自分の【姉】でありゲーム実況者の【アキ】だった。

・

『姉さん、何で泣いてんの』

人前で初めて姉さんがドラムを披露したのは、姉さんが高校三年生の時の文化祭。俺は姉さんのドラムを叩いてる姿が見れる、そう思って文化祭に訪れた。

演奏後、姉さんの周りには人が集まっていて、ワイワイしていて、部外者の入れる余地なんてない様に見えるのに、どこか姉さんは心ここに在らずの顔で。

従兄の春樹兄さんに暴言を吐かれた事を知らず、俺はそのまま帰宅。家に帰ってきた姉さんは、泣いていた。

『何で、だろうね……ごめんね、ちょっと疲れたのかも』

姉さん、覚えてる？あの日から姉さんはドラムのスティックを人前では握らなくなったね。俺は知ってるよ、あの時なんで泣いてたのか。

悔しかったんだよね、苦しかったんだよね。姉さんが培ってきた努力を、経験を、夢を否定されて。

ごめんね、守れなくて。姉さんをトラウマから救ってあげられなくて。

俺ね、凄い安心したんだ。姉さんが初めてドラムを叩いてみたって動画を投稿した時。少しずつ姉さんは前に歩き出してるんだって。

今日は楽しみにしててねって、言ってたけど、姉さんのせいで目の前涙でぼやけて見えないんだけど、どうしてくれんのさ。