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68.逃げ続けた罰 ページ15

・A




12月半ばのある日、弟から電話がかかってきた。もしかして、もう帰省の事気にしてるのかなって思いながら電話に出ると、電話先で響は泣いていた。





理由を聞くと親戚関係の事だった。何度か電話が来ていたのだが、ここ最近は特に話が無かったので落ち着いていると思っていたけれど、そうじゃなかったらしい。





兄さんが私の耳に入らない様に阻止していたらしく、実際はたくさんの出来事が起きていたという。




どの話も頭にくる事ばかりだったが、その中でも気になったのが兄さんの恋人の事。兄さんには婚約までいった恋人が居る。兄さんが副社長を勤める会社の人で、兄さんの2つ年下の相澤薫さん。




数年の交際を経て婚約。しかし、2年ほど前に相手の方から婚約破棄が申し込まれる。




当時の理由は他に好きな人が出来てしまったから。でも、本当の理由は違う。薫さんは元恋人に付きまとわれていて、兄さんと別れなければ、と脅迫されていたのだ。




兄さんはそれを聞いてすぐに薫さんと連絡(取ろうとしたが、薫さんは迷惑かけたくないと拒絶。ここ2年間、兄さんは薫さんを守れなかった後悔に苛まれていた。




『兄さん姉さんには言わなかったけど、伯父さん達に結婚しろって言われてて、兄さんは何度も断ったのに、毎回言っててさ』




相手は伯父が勤める会社の取引先の娘さん。伯父は兄さんの事を、昔から駒としか思っていない。頭が良くて器量がいい兄さんを、利用し続けていたのだから。




『しかも伯父さん達、兄さんが婚約破棄された理由知ってるんだよ? 薫さんが脅されてたって事も知ってて……』


「ごめん響」


『何で姉さんが謝んの?』




私は兄さんと響に任せて、いつも伯父達と会わない様にしていた。兄さんに甘えて、嫌な事から逃げていたのだ。だから、私にも責任がある。





「私が、逃げていたからだよ。兄さん居る?」


『うん、居るよ……兄さん、はい』


「もしもし兄さん?」


『あぁ、A。ごめん大変な時期に』


「もう、頑張らなくていいよ。お父さんの為に」




お父さんの為に逆らわずにやってきた。お父さんの顔に泥を塗らない為に、兄さんは何を言われても我慢してきた。



『A……』


「今年も呼ばれてるんでしょ?」


『あぁ』


「今年で最後にしよう、私も一緒に行くからさ」




兄さんは、やめろと言ったけど、私は間違いを間違いのままにしておくのは好きじゃないし、卑怯者も嫌いだ。

◇→←◆


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作者名: x他1人 | 作成日時:2019年12月26日 13時

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