敬語系実況者6【最終兵器俺達】

79.好きな人の好きな人 ページ9

・フジ





Aが調子を取り戻してから1ヶ月が経過した。無理をしている様子はなく、楽しそうにゲーム実況をしているので今は一安心。





今日は元々キヨとAと俺の3人で実況を撮る予定だったので集まっていた。撮り終わったら3人各々違う事をやってる。




俺とAが編集をしていると、キヨは1人でゲーム。キヨは無言なので、ちょっと動画モードとの差が激しいなと思ってしまう。





何となく暇だったので、動画を回してAを撮っていたら、キヨがやってきて予期せぬ面白い動画が撮れた。




ﾌｼﾞ「これTwitterあげていい？」


ｷﾖ「出演料は？」


ﾌｼﾞ「出演料！？ じゃあ、綾鷹あげる」


ｷﾖ「あげるじゃねぇ、元からお前のじゃねぇんだよ！(笑)」




キヨとそんな会話をしていたら、Aが笑っていた。あぁ、いつも通りに戻ったんだなと再び実感してしまう。




ｷﾖ「そういや、A来週帰るんだっけ？」


「そうですね、来週に帰省します」


ｷﾖ「お土産忘れんなよ(笑)」




来週にはAのお母さんの命日が来る。Aはどんなに忙しくても、命日の日には必ずお墓参りに行き、手を合わせに行っている。





Aのお母さんは、当時赤信号で飛び出したAと変わらない年頃の子どもを守って亡くなったらしい。




Aは以前その話をしてくれた事があった。小さい頃の自分は、何が起きたかわからなくて、大きくなるにつれて、どうして自分は母親を亡くして母親に守られた子は生きているのだろうかと。





本人は「こんな事思っちゃいけないって、どこか幼いながらに分かっていました」と苦笑いしながら話した。





母親が居なくていじめられたこともあるという。自分の母親は人として簡単には真似出来ない事をして、尊敬はするけれども母親として自分達を置いていってほしくなかったと。




どんなに苦しかったんだろう。行き場のない恨みを積み重ねていき、複雑な感情を消す葛藤。俺には簡単に理解出来ると言えないし、言っちゃいけない事だ。




「フジさん？ どうかしました？」


ｷﾖ「何ぼーっとしてんだよ」



ごめんごめん、と笑いながら言って2人と会話を進める。どうも考えるとぼーっとしてしまう。





2人が不思議そうに俺の顔を見てくるので、ふと思いついた言葉を並べた。

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