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1回戦は何とか勝てた、けれど指が思うように動かないというか、緊張のせいで指が強ばっているらしい。
追い打ちをかけるのが、みひろさんのコメントと生放送で流れているコメントだった。目の前の画面にはたくさんのコメントが流れている。
その後は2回戦3回戦と連敗。挙句の果てにハンデをつけるかと相手に言われる始末。
4回戦目は焦りでいつもはしないようなミスばかりしてしまう。こんなにも乱れると思っていなかった。思ったよりも自分は追い込まれていて、緊張が感情と体を支配して、不安は幾度も押し寄せる。
休憩に入り、置いてあった水を飲む。落ち着け落ち着け、と自分に言い聞かせてもダメだ。
どうしたらいいんだろう、このままじゃ負けてしまう。このままじゃ、みんなとの約束を守れない。自分の精一杯も出せてない上に、戻れないかもしれない。
もう、ダメなのかな。
そう思った瞬間、電話が鳴った。ディスプレイにはキヨさんという名前が並んでいて、私は少し考えてから電話を受けた。
「……もしもし、キヨさん?」
キヨ『生放送、見てた』
「っ! 3回連続で負けて……私もう……」
キヨ『はっ? 何弱気になってんだよ! お前俺に啖呵切ったろ、自分の意思貫いて生放送対決に挑んでんだろ! 戻ってくるってファンにも約束しといて、お前が弱気になってどうすんだ馬鹿!』
キヨさんの勢いに私はつい言葉を詰まらせてしまう。
キヨ『まだだ、お前はまだ本気を出してねぇ。お前の得意技何だよ?』
「と、得意技?」
キヨ『いっつも俺らを苦しめる巻き返し勝ちだろうが! 今から巻き返してこいよ、俺はお前を信じてる。だからお前はお前を信じろ。A、お前らしい勝負をしてこいよ』
「私らしい……勝負」
キヨ『次出番が来て、情けない面しててみろ、許さねぇからな!』
電話がプツッと切れて、すぐにLINEがキヨさんから来た。
キヨ『待ってるからな』
キヨさんだけじゃない。メンバーからも、レトさん達からも、ゲーム実況者仲間からも、歌い手さん達からもメッセージが沢山来ていた。
それに、キヨさんの言っていた言葉の通りだ。私は自分を見失って自分を信じられなくなっていた。
自分らしい試合も出来ていない、情けない顔をしてファンを不安にさせてしまっていたかもしれない。そんなの私が望んでいる事じゃない。
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明(プロフ) - ちまさん» ちま様 一気読みしていただけるなんて、とても嬉しいです! 引退をかけた勝負の回はどうやったらハラハラする感覚を小説で表現できるのだろうと悩んだ部分なので、褒めていただけて光栄です。 面白いと言って下さりありがとうございます。これからも頑張ります! (2020年5月10日 11時) (レス) id: f2c90cc64b (このIDを非表示/違反報告)
ちま - 1から一気読みしました!!!!!めちゃくちゃ面白いです!!アキちゃんの引退をかけた勝負は読んでいて自分も生放送見てる気分なってました!続き楽しみです! (2020年5月10日 6時) (レス) id: b0d560efb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:明 x他1人 | 作成日時:2020年3月4日 14時