危機 ページ3
その端正な顔は歪な笑顔で歪められており、目の奥から覗く蒼い瞳はこちらをジッと捉えて離さなかった。
血が着いていてもおかしくない表情だ。
彼はその表情とは裏腹に、爽やかに話しかけてくる。
「こんばんは、Aさん？随分と遅い帰りですね」
その対比に恐怖を感じる。夜風の冷たさもあって、本当に恐ろしかった。
何を考えているのか分からないとは正にこの人の事だろう。
黙っている私に、彼は畳みかけるように話す。
「どうしたのですか？そんなに怯えて」
見られた事に気付いていないのだろうか、いやそんな訳ない。絶対に気付いているはずだ。では何故こんなに普通に挨拶してくる。
どうすればいいのか、まるで手も足も出ない感覚だった。
「え、と…何でも、ないです」
パニックになってしまい、そんな言葉が先に出る。やってしまったかもしれない。
最悪な可能性が頭を蠢く中、彼の返事を待つ。しかし思いの外、彼はあっけなくこう返した。
「そうですか」
彼はゴミを払ったかと思うと、そのまま家へと帰って行った。
何故ゴミ漁りなどしていたのか？何をブツブツ独り言を呟いていたのか？聞きたい事は彼が立ち去ってから山程浮かんだ。
だが、今から問いただしに行く訳にもいかない。
私は拭えない疑問と不信感を抱えながら、家へと帰宅した。そのままそこにいたところで、体が冷えるだけだった。
電気毛布で暖かいベッドに潜った。こういう時、現代に産まれて良かったとつくづく感じれる。こうやって文明の利器にあやかれるからだ。
でもやはりというか、そのまま眠れはしなかった。
あまりにも隣人のあの行動と態度は不気味過ぎる。
あんな場面見られたら少しは動揺するものではないだろうか。私だったら絶対に…と、考えが及びそうなったところで思考を切った。
何故あの行動をしている前提で考えようとしているのだ。このままでは眠れる気がしない。別の事を考えよう。
そういえばと、思い出す。明日は休日だ。
近所に住んでいる友達と話せる日である。楽しみな予定を胸に思い浮かべれば、自然と安心して眠りにつけれるようになった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ヤンデレ」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名も無き者(プロフ) - そう言って頂き嬉しいです…！イベント参加させて下さりありがとうございました！ (3月7日 6時) (
レス) id: b52add099d (このIDを非表示/違反報告)
あめ(プロフ) - この度はイベントへの参加ありがとうございました！(連投申し訳ございません) (3月7日 0時) (レス) id: 82abefb882 (このIDを非表示/違反報告)
あめ(プロフ) - コメント失礼します〜！題名的にギャグ系かと思いましたが、想像より遥かに真剣なお話で良い意味で期待を裏切られました…！描写も細かく、もっと有名になるべき作品だと感じました！これからもお時間あるときにでも閲覧させていただきます！ (3月7日 0時) (レス) id: 82abefb882 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名も無き者 | 作成日時：2024年3月6日 17時
