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ゆっくりとまふが離れていく。
唇を重ねたことより、離れていった時に自身の唇が熱を持っていることの方が恥ずかしい気がする。
「……」
『……』
どんな顔をしていいのかも分からなくて、でも彼から視線をそらすこともできなくて、キスした直後なのに顔を赤くすることなくただただぼーっと互いの顔を見つめ合う。
いや私の顔は赤いのかもしれないけど、私の視線の先にいる彼はただキスをしたという事実に困惑しているような表情で。
……いや、唐突にキスされたのは私だしその顔するべきなのは私の方な気もするんだけど。
「……帰ろっか」
『……』
時間が急に動いたみたいに、彼がふんわりといつも通り笑って教室から出るような素振りを見せた。
慌ててスクバを拾いながら彼の腕をつかんで、彼を引き止める。
いやいやだって!なになにキスしてこの話終わりなの!?ってなるでしょ普通!!
動揺しまくっている私の心を他所に、不思議そうな顔をしたまふが私を見下ろす。
「なに?」
『つ、付き合ってくれるの?』
「えっ」
腕を掴んでるからか、彼の体が完全に硬直するのが分かった。
瞳がグラグラ揺れてる。なんて言おうか迷ってるのかもしれない。
真っ直ぐに彼の瞳を見つめて、ぎゅうっと腕を掴んだ手に力を込める。
「……それこっちのセリフじゃない?」
『え?』
「なに、A僕と付き合ってくれるの?」
『うん』
「マジ?」
『まじ』
そもそもあんたが嫌いだったら毎日一緒に帰ってないわよ!なんて思いつつも、そんなこと言える雰囲気じゃない。
お互いの瞳を見つめあって、また時が止まったみたいに動けなくなる。
「そ、っか……そっか、」
しばらくしたら彼がそう呟いて、目線を落とした。
その時に見えた口角がちょっと上がっていて、そうかと思ったらまふが唇を噛んで。
ああ、そういうところが可愛いんだよなあ、なんて。
「どうしよう、めっちゃうれしい」
はにかんだように笑って、彼がそう囁いた。
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なの(プロフ) - 本当に本当にありがとうございます。感謝しかないです…こんなに素敵な誕生日は初めてです…ホントはもっと早く送りたかったけどずっとチキってました。すみません…みんな大好き!! (2021年11月14日 1時) (レス) id: d994763904 (このIDを非表示/違反報告)
らむちゃ - すごい好きです(((*≧艸≦)ありがとうございます! (2021年10月13日 20時) (レス) id: def79cd7ab (このIDを非表示/違反報告)
りょくちゃ(プロフ) - 大好きな作者さまたちの最高の作品でした。本当にありがとうございました。 (2021年10月4日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
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