その瞬間まで

C6 安部友裕＊ ページ46

◎ 6side





約束を、果たせなかった

“ 絶対に、日本一なってくるから ” って、約束したのに



「…A、さん」

『さん付けしなくていいって、』

「…A」

『ん？お腹すいた？』



Aはいつも、何があっても変わらない態度で接してくれる
俺の方が年下だから甘えてしまうことの方が多いけど、もちろん俺的には頼ってほしい
Aが強いってことは知ってる、ただ、強がってるだけだってことも



「Aさん、ごめん、」

『どうしたの、』

「日本一、獲れなかった」

『うん、見てたよ』



俺がもう一度、ごめん、と言うと目一杯に涙をためて
目の前に俺がいるから、泣かないようにって思ってるんだろうな、きっと



『ともの活躍、ちゃんと見てた、』

「…え？」

『地元で活躍しちゃうなんて、ほんっとかっこいいよ』



てっきり、頑張ったねお疲れ様、って言われるかと思ってた
でも、Aの口から出てきたのは俺の話
そりゃ、見てたって言ったから本当に見てくれてたんだろうけど、何か



「…本当にありがとう、Aさん」



何か、他の人に言われるのとは違う
安心するようなそんな言葉

泣いている彼女の腕を引いて抱き締めれば、俺の胸元にすり寄ってくる

こんな風に、本当に年上か？って思うこともよくある
でも、年の差なんて、



『…とも、すきだよ、だいすき』



関係ない



「俺も好きです、Aさん」



優しくて温かい言葉をくれる君が







( 鼻水つけてない？ )

( 涙と鼻水つけてる、)

( もう、…いいけど )







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