運命のヒト【Yoshino Hokuto】2

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｢あ｣

心の中がモヤモヤする


目の前には北人くんが女の人と楽しそうに話しながらマンションに入っていく姿が見える


女の人は後ろ姿しか見えないからどんな人か分からないけど
彼女なのかな、



北人くんは私を守りたいとか言ってたけどそんなの口実で、本当は好きな人ができたんだ



はぁ、なんなんだろう

涙が出そうになる、ダメだ
ここから一旦離れようと思い、踵を返す





気づけばマンションの近くにある海に来てしまった



階段に座り、さっきのことを思い出すと、ぶわっと涙が溢れてくる




私って弱いな、自分から別れようって言ったくせに
やっぱ未練タラタラじゃん





それから何分経ったんだろう、ズボンのポケットにある携帯がブーブーと振動する


見てみると、『いっちゃん』

あ、ご飯作ってない
いつもご飯を作ってあげてるから電話してきたんだ




お腹空いてるよね、もう少しで帰ると電話しよう



『もしもし？』

樹｢どこにいる？バイト？｣

『あ、ううん。ちょっと』

樹｢何それ、てか何で元気ないの？
なんかあった？｣


無駄に鋭いいっちゃんはこういうとき本当に嫌になる、気づかないでよ


『大丈夫だよ、すぐ帰るから』

樹｢大丈夫なんて嘘だろ、待ってろそこで｣

『え、いっちゃん？もしもし？』



電話が切れた、
待ってろってどこにいるかも分かんないのに




帰ろ、




とことこ歩いてると


？｢A…！｣


顔を上げたら、息の上がったいっちゃん


｢いっちゃん！走ったの？！｣

樹｢もう、心配したじゃん｣



ふわっといっちゃんに抱きしめられる


｢…え、｣

樹｢電話から波の音聞こえるし元気ないし、死ぬのかと思った｣

｢死ぬって、なんでよ笑｣

樹｢何があったか分かんないけど、無理すんなよ
苦しい時は苦しいって言えよ
辛い時は辛いって言えよ
俺になら何でも話せばいいじゃん
てか、話してみろよ｣


さっき泣き止んだのに、
またぶわっと涙が溢れてくる



｢さ、さっき…、北人くんが、女の人と、楽しそうに話しながら、、マンションに入ってったの…、彼女かもって、…もう、嫌になって…、｣

樹｢も、もういいよ、分かったから分かった｣


いっちゃんの手が私の頭を撫でる


樹｢そんなに苦しいんだったら片思いもうやめろよ
もっと周りみてみろよその北人ってやつよりいい男いるかもよ？｣




この時はまだこの言葉の意味が分からなかった

この言葉には何も返せずそのまま静かに2人で帰った

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