午前零時の哀歌

ダンス．12 ページ12

『♪ 才能なんて幻想と 高校辺りで気付いたのかい？ 化け物みたいな奴が ゴロゴロ居ると知ったのかい？ そんな中誰よりも 頑張ってる奴を見ちゃったのかい？ そして自分の手には 何もなかったのかい？』



誰もが目を奪われた



座っていた時とは格が違う キレキレの上手すぎるダンス



動きは大きく指先まで意識されている それに歌とピアノが相まったそれはさながら プロのものだった



『♪ 何処に居たの 探してたよ 連れてって 連れてって 何もかも 捨てていくよ 何処までも 何処までも』



奏者さんとA姉の相性はめっちゃ良くて息ぴったり



『♪ 分かってないよ きっと 何もかも変わらないよ ずっと ｢傍に居たい｣なんて事言われても 分かってないの』



『♪ ねぇ そこの旦那 ダンナ 私の一夜を買ってくれよ ねぇ そこの旦那 ダンナ 今夜限りの夢を見せてあげる ねぇ そこの旦那 ダンナ 金のためなら 身売りをします ねぇ そこの旦那 ダンナ 哀れな私を抱いてくれよ』



割と際どい歌をうたった彼女に後ろの奴らは人だかりの中心に入って行こうとしたが黒髪の男に止められ、まだ見守っている



『♪ 苦手だったテストだって100点だ イェイ！
殴りながらFuckなんて最高にRockじゃん 行儀良く愛し合って〇なんてSuckじゃん 誰も彼もニコニコってみんなみんなFakeじゃん 知らないって？ 知ればわかる It's A Whole World』



...中3には見えない



ふと音が小さくなり曲調がガラリと変わった



『♪ ...あの子はベランダを飛び降りて あの世にそのまま飛び立った この世がきっと 狭すぎて 大きな宇宙目掛けて 飛び込んだ』



ふと 消えてしまいそうだと思った



何もなかったように自分の人生の中から欠けてしまうような



そんな感じ



『♪ 朝日が昇る いつかを 追いかける 伸ばした手では まだ届かない場所 この胸の奥に 住み着く 臆病が 僕の心を 蝕まぬように』



彼女の笑顔は儚く 悲しく 美しかった



気付いたらA姉の手を掴んでいた



勝手に消えてしまわないように



"お兄ちゃん達"も同じ事を思ったようだ

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