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どん、って誰かが肩にぶつかって、ぐっとショルダーバッグを引っ張られたところまでは覚えてる。
その後思いっきり引き倒されて、ほとんど顔から地面に突っ込んだ。
がんって頭を打った衝撃があって、気が付いたらさっき出たはずの美容室のソファに寝かされてた。
「御客様、大丈夫ですか！？」
『あれ…？お兄さん？』
「あー、良かった！今救急車呼ぶとこでしたよ！気付いて良かった！」
体を起こそうとして、ずきっと頭と肩が傷んで混乱する。
『えーと、私…？』
「御客様、そこでひったくりに遭ったんです。バッグ取られて、道に転がされて。周りの人が声上げて騒いでたから店出てみたら、御客様倒れてたから！慌ててとりあえず、うちの店に運んだとこです」
うわあ…最悪。
『バッグ…ああ、じゃあ私荷物全部』
「…盗られたみたいですね…」
『あー、グクに連絡しないと…って』
グクはスマホ最近新しくして、番号変えたんだった。…全然おぼえてない。
どうしよう、って思うけど、頭が痛くて考えがまとまらない。
そしたらお店の人が私に、
「頭ぶつけたみたいで、切れてはないけど内出血してますよ。一度病院行きませんか？僕この後予約入ってないし、付き合います」
『いやいや！そこまでしていただくわけには！』
大慌てで、手を振って、立ちあがろうと膝に力入れたけど。
膝が笑って、立てなかった。
「御客様」
そっと、優しく、私を驚かさないさりげなさで手を取られた。
本当だったら、男性にこんな風に手を取られるなんてこと、グク以外に許しちゃいけないことだって分かってるけど、手を取られて始めて、震えてたことに気付いた。
「大丈夫。ちょっと検査してもらって、大丈夫だったら、レストランまで送ります。それだけです。だから、一緒に居させてください」
泣いたらだめだって言われたけど、ちょっともう、我慢できなくて。
『ごめんなさい…っ』
せっかくの晴れの日に、こんなことに巻き込まれる自分が信じられなくて、情けなくて涙が堪えられなかった。
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作者名：フネ55
| 作成日時：2023年1月28日 22時
