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北「A！」
男性客から逃れた私は
力が抜けたように、
へなへなとその場に座り込む
私「ほ、くと…」
北「もう大丈夫だから。」
北斗の一言で堰を切ったように溢れ出す涙
気づけば北斗の胸の中で泣いていた
とんとん、と子供をあやすように背中を叩れる
北「怖かったね、もう、大丈夫。」
泣いて何も喋れない私に
北斗はずっと安心させるような言葉を
かけてくれた。
ひとしきり泣き終わると
北「立てる？」
と北斗に手を引かれ、
バックヤードに連れていかれた。
椅子に座らせると、ちょっと待ってて、と。
しばらくすると北斗が帰ってきた。
北「店長には俺から話しておいたから。
今日はもう上がっていいよって。
あと、俺が家まで送る。」
タイミングよく今日は
いつものように混雑もしておらず、
店長と店長の奥さんだけで十分だそうで。
北斗と私は上がりでいいそう
ご厚意に甘えて帰らせてもらうことにする
北斗が私の荷物まで纏めてくれて
気付いたら、帰るよ、って言われて
急いで後を追う
さりげなく私の荷物持ってくれてる北斗
私「荷物、自分で持つよ。」
北「いいの、今日は。」
両手が空くのも変な感じになるからもあるんだけどな。
と思っていたら、北斗の手が私の手をとる
左を向くと、至って平然な顔をしているから
私も前を向いて歩く
私「…男の人の力ってさ、あんな強いんだね。」
北「ん？」
私「片手だけだったのに、抵抗できなかった。」
ついさっきまでの事を思い出す。
片手だけなのに、抵抗なんて全然できなくて
悔しかったなあ
北「ごめんね、俺が対応すればよかった。」
私「違うの、私だったみたい。
元々の目的は。」
ストーカー紛いな発言してたし
今思えばあのお客さん、
北斗がバイトに入る前はよくお店に来てた
世の中ってよく分からない人もいるな
北「強がんなくていいよ。
でも、もう大丈夫。安心して。」
と言って私の手が強く握られる。
はっきり分からないけど、
なぜだかその言葉に安心して、
私「ありがとう。」
そんな気持ちも込めて、私もぎゅっと握り返した。
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作者名：朔 | 作成日時：2020年5月9日 13時
