70：見守る者 ページ29
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世界中の話題が
ある2人のことで持ち切りだ。
"女優 ビビ 電撃引退!!"
無期限の活動休止から
二度と表舞台には立たず、
消えてしまった伝説の女優。
なんて、
2人の報道が出た時は
火に油を注いでばかりだった
SNSもテレビも、
Aちゃんをこれでもかってほど持ち上げる。
なんとも気持ち悪い。
それでもそこにイライラしてるのは
案外僕だけで。
「ジミナ顔ゆるゆる〜」
きっと、Aちゃんの写真でも見てたであろう
僕の親友は、誰よりも幸せそうだ。
"ビビ"の引退報道後
火を消すように報道された
ジミナの電撃結婚。
世間の注目は光の速度で変わる。
相手は公表しなかった。
勿論、ファンやテレビの人たちに予想はされ、
相手もほとんど当たっていて。
ジミナは言った。
「確証がないものは存在しないのと同じ」
その時の目は、
僕が今まで見た事のない
覚悟を決めた人間の目だった。
そうやって、
ジミナはAちゃんを守るんだね。
僕は嬉しかった。
時に、目の前にある幸せに目を伏せて
ただキラキラした偶像でなければいけない
僕達に、普通は特別で。
「今度僕に紹介してよねAちゃんのこと」
普通の人間みたいに
誰かを思って
誰かのためにボロボロになって
そういう幸せを
僕の親友も築けるんだ。
今目の前で心底嫌そうな顔をして
「予定、聞いてみる」
なんて言った時にはもう
顔をゆるゆるにしてるジミナ。
そんなジミナの顔を見たら
僕の心も温かくなる。
ジミナ。
僕はそれが、ちょっぴり寂しくて
すっごく嬉しいんだ。
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作者名：cino | 作成日時：2023年10月22日 0時
