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66：覚悟 ページ25
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それから僕の知らない
Aちゃんの話を沢山聞いた。
「ここ、Aがよく夜に1人で座ってました」
過去がどうあれ
僕のAちゃんへの思いは
何一つ変わらない。
むしろ、更に愛おしさを感じるくらいには
Aちゃんの優しさや、無償の愛情を
僕に抱いてくれる根源を、
知れてよかったと思う。
施設の外にポツンと寂しそうに置かれたベンチ。
「きっと、待ってたんです。母親のこと」
Aちゃんは、
僕がどれほどAちゃんを愛しているか
感じていたのだろうか。
それを僕は、
ちゃんとAちゃんに伝えられていたのだろうか。
「戻ってくるのか分からない相手を
ずっと待ってるなんて、
相当の覚悟と愛がないとできない」
僕の頬を撫でた生ぬるい風が
Aちゃんの体温に似ている気がした。
目を瞑ると、Aちゃんの顔が浮かぶ。
声も匂いも温もりも
今目の前にあるのかと疑うほど
鮮明に、はっきり輪郭を帯びて。
ジョングガが言った、
Aちゃんのためならなんだってできるか
ってその質問、今ならすぐに答えられる。
「今度は必ず、Aちゃんと二人でここに来ます」
そう僕が言うと、
施設長は目を丸くしてその瞳から涙を流した。
僕の覚悟。
あぁどうしよう。
たまらなく
Aちゃんに会いたい。
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作者名：cino | 作成日時：2023年10月22日 0時
