61：なんのため ページ20
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プロデューサーや社長の所に何度も足を運んだ。
「Aさんとの交際、許してください」
誰も、1度も首を縦には振らなかった。
当たり前だ。
僕たちのような人間が恋愛をすることは簡単じゃない。
僕たちはあくまで、
支えてくれる人達がいるから存在できる。
そんなのは分かってる。
「今日もダメだった？」
練習室に戻った僕に開口一番
テヒョナはそう聞いてくる。
相当、顔に出ていたんだろう。
「ダメって言うか、
鍵が無いと開かないドアを
無理矢理開けようとしてる感じ、かな」
「…諦める？」
「諦めるわけなくない？」
「それでこそジミナだよ」なんて
満足気に肩を叩いて立ち去るテヒョナに
少し、救われているのも事実で。
そんな風に思えていたのも束の間だった。
"女優 ビビ 無期限活動休止"
その言葉は僕の心を簡単に蝕んでいく。
急いで携帯を開いた。
Aちゃんの連絡先はどこを探してもない。
僕たちのことを反対している人達に認めてもらって、
Aちゃんの手をもう二度と離さないようにと
強く思うほど、その手はどんどん遠くなる。
どうにでもなればいいと思った。
息が切れるまで体を動かして
メンバーが止める声なんて聴こえない程
ただ、この行き場の無い気持ちをどうにかしようとしていた。
「ジミニヒョン」
その声と同時に肩に力が乗って、
ゆっくりと開いた目の先に
少し呆れた顔をしたジョングガが立っていた。
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作者名：cino | 作成日時：2023年10月22日 0時
