60:どうして ページ19
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その日以来、グクと連絡は取ってない。
「もう俺はAが泣いてても助けてあげられない」
「だから笑顔でいてね」
あの日、私を家まで送ってくれたグクが
私の頬を優しく引っ張って最後に言った言葉。
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久しぶりに、私が育った施設に足を運んだ。
出迎えてくれた施設長は
嬉しそうな顔をして優しく私を抱きしめてくれた。
「これ懐かしい」
「この子達いっつも
Aの隣でご飯食べるのは俺だ〜ってきかなかったんだよ」
「え、そうなんですか?」
昔の写真を見てなんだか心が温かくなる。
ここに来たら大丈夫って、
安心する何かがある。
「あぁ、これ」
「ん?」
「この写真覚えてる?」
その写真は、男の子達がなにか喧嘩しているような様子で
その奥で小さな男の子を慰めている私が写っていた。
全然覚えてないなくて
きょとんとする私に施設長はにこりと笑った。
「この写真見て、嬉しそうな顔してた」
「え?」
「僕の大好きなAちゃんだ、って。」
時が止まったみたいにゆっくりと、
頭が真っ白になっていく。
「ジミンさんがね、ここに来たの」
その名前だけで、
私の胸は簡単に鼓動をはやめる。
なんで?
どうして?
口にしたいことが沢山あった。
でも、声には何一つならなくて、
「あのね、」と施設長が話を切り出した。
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作者名:cino | 作成日時:2023年10月22日 0時