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目線：NO
番頭は茶を啜り、言葉を紡ぐ
番頭「工事の人間を驚かして去らせることは可能でしょう。その程度のことなら本家の力を借りずとも我々でも出来ることです。しかし、そうしたところで人はまた別の山に処分場を作るだけです」
番頭「鼬ごっこ、にもならない。妖の領域は少しずつ削られて行くのです。宿命かもしれません」
鴆「宿命…ねぇ…」
唯は何か思うところがあるのかふぅ…と深い溜息をついた
番頭「話は変わりますが鴆様に目を通して貰いたい物があります」
番頭は傍らに置いていた紙片を唯に差し出す
鴆「なんだよ。これ」
番頭「薬鴆堂の営業再開を案内するチラシです。鴆様にも一度、目を通して頂いて、問題なければ印刷に回します。本来ならば此処が新築されるのと同時に手配したかったのですが…」
鴆「仕方ねぇよ。色々とバタバタしてたもんな」
番頭「はい。……で、如何でしょう？そのチラシ」
鴆「……うん、いんじゃね？印刷しといてくれよ」
番頭「ろ、碌に見ていないじゃないですか？！」
紙片を少し見て返した唯に番頭は居住まいを正し＿＿、
番頭「鴆様」
番頭の声音が何時になく厳しく、鴆の名を呼んだ
鴆「あんだよ…」
番頭「山での妖の居場所を心配なさるのも結構ですが、もう少しこういった作業にも目を向けて頂きとう御座います！貴女様はこの薬鴆堂の医師であり、薬師であり、同時に社長でもあるのですぞ！」
鴆「社長ねぇ…？」
番頭の言葉に少し険しい顔を一瞬見せポツリと呟いた
番頭「私はこの薬鴆堂でお世話になっている以上、先代、先々代の頃よりも此処を繁盛させたいと思っているのです」
鴆「繁盛ねぇ…。俺としては医者が暇ならソレはソレで結構なことだと思うがね」
番頭「鴆様が仰ることも御尤もですが油断は禁物なのです。……もう少し利益が上がるシノギと言う物も目指していくべきだと、私は常々思っておるのです」
鴆「利益、ね…」
番頭はチラシをヒラヒラと示す
番頭「こういう物を広く撒いて、妖怪業界にウチの存在を更に知って貰うことが肝心なのです。因みにこのチラシとは別に「奴良組通信」には新聞広告を出しておりますし、近々モバイルサイトをオープンさせる予定ですので」
鴆「もば？……もう勝手にしてくれよ」
話についていけなくなった唯は適当にあしらい、椀と酒壷を持ち立ち上がった＿＿
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作者名：桜ノ雨(参) | 作成日時：2022年11月20日 10時
