男装系頭領は義兄弟の力になりたい！〈短編集〉 (ページ19)

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目線：NO

唯は懐から一枚の紙片を取り出し、ソレを血血木に手渡す

血血木「薬鴆堂…」

と血血木が小さく呟く

鴆「俺の屋敷だ。いっぺん燃えちまったんだがよ、ちょっと前に建て直して、また元通りになった。気が向いたら来いよ」

血血木は話が見えないと言う顔をしていたが唯は話を続ける

鴆「居場所を追われたせいで沢山血を吸わなきゃいけなくなったんだろ？けどよ、そうそう浮世絵町で血ぃ吸われても困るんだよ。此処はな、奴良組の縄張りなんだ」

血血木「なら、どうしたら…」

鴆「だから！妖気を回復させるために血が吸いたくなったら妖怪を襲う前に俺んとこに来いっつってんだ。血を吸わなくても妖気が回復する薬、俺が処方してやるよ！」

唯が片目を瞑り、ニカリと笑うと血血木の顔がパッと明るくなった

血血木は唯は貰ったチラシを胸に抱えるようにして頭を下げる

血血木「鴆様！ありがとうございます！！ワシ、鴆様を襲おうとしたのに…！！それなのに…こんな親切にしてくれて…ｯ！！」

鴆「気にするな、俺もチラシ(ｿﾚ)を渡せて良かったよ。チラシ撒いて営業しろって口うるせーのがいるんだ」

血血木と別れ、屋敷に戻ると番頭が頭から湯気を立てて怒っていた

吸血妖怪と遭遇して色々あった。多分、ソイツは近々、客として此処に来ると笑って報告すると番頭はもっと怒り出した

番頭「笑っている場合ですか！鴆様、どうして私の心配も聞かずに…」

唯が長くなりそうな番頭の説教を適当にあしらいながら耳を塞いで廊下へ逃げるとそこへ組員が来客を知らせに来た

組員「鴆様、本家のリクオ様がお見えです」

リクオと聞いて唯の表情はパァッと明るくさせた

唯は酒と冷蔵庫にある作り置きのつまみを持って来るよう組員に言いつけ、鴆はリクオを迎えに玄関へ向かった

夜リクオ「よう、鴆。新築祝い、持って来たぜ」

リクオが上がり、框に腰を下ろしていた。その手には酒瓶が握られている

唯の笑みが濃くなった。仕事の後の酒と甘味は格別だが、其処に共に酒を飲み合う仲間がいる時、酒の味は更にその上を行く

鴆「上がれよ」

唯はリクオを請じ入れる

この晩、リクオは土産を2つ持っていた

1つは今掲げた新築祝いの酒＿＿

そしてもう1つは土産話。置行堀に遭った話である＿＿