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「今日の元太くんはなんでも聞いてくるのね」と聞けば、「後悔してるからね。Aさんのことなんにも知らなかったから」といいながらフォークに巻き付けたパスタを口に運んだ。
「……確かにね」
そういう私の言葉は相手に届かなかったのか、それに対して何も返ってこなかった。
食事が終わると前と同じように食器を水場まで持って行ってくれる。
そして、少しだけたわいのない話をしながら、紅茶を飲むと「そろそろ時間だ」と荷物をまとめ始めた。
「不定期で大変だね」
「大変だけど、楽しいし、夢だから大丈夫」
誇らしげな笑顔。
玄関で靴を履く背中を見る。
ちゃんと見た事ないけど広い背中。
男の人だなって感じる。
「Aさん」
ぐるっと私の方を見て、元太くんは笑った。
「俺、また会いたいんだけどダメ?」
その笑みは申し訳なさそうというか切ない顔に近くて、そんな顔できるんだと思った。
「……海人に言えない関係じゃなくていいから、会ってよ」
消えそうな声で俯きながら「お願い」と言われてしまうと断れなかった。
意思弱。
私は「元太くん」と名前を呼ぶ。
俯いた顔はそのまま。
「……いいよ、また会おうか」
まるであなたの願いを聞きますよなんて口調で言ったが、私が会いたいというのもある。
利用して悪いな。
元太くんは顔をはっと上げて、「ありがとう」と言った。
そして、携帯でサラッと時間を見ると「やっべ」と焦ったように玄関の取っ手に手をかけた。
1度振り返り、私の頬にチュッと音を立ててキスを落とす。
そして「またね」と笑う顔は前に戻ったようだった。
私はがちゃんと扉が閉まると頬に触れた。
「……何が海人に言えない関係じゃなくていいからだよ」
頬にキスだって言えるかよ。
そういう私の口角は少し上がっていた。
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ちな(プロフ) - くるみんさん» ありがとうございます〜!主人公ちゃんと同い歳なんですね。ゆったりの更新ですが、ぜひ楽しんでいただけますと幸いです!今後ともよろしくお願いします。 (2021年7月20日 15時) (レス) id: e9e3793e8e (このIDを非表示/違反報告)
くるみん(プロフ) - 元太大好きです!元太の4つ上なので嬉しすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも更新頑張ってください! (2021年7月19日 2時) (レス) id: ca6f57219d (このIDを非表示/違反報告)
ちな(プロフ) - ちゅっじぇさん» ありがとうございます。直接お言葉を頂けることがなかったので、更新の励みになります。少しおサボりしましたが、またゆっくりと更新しますので、また読んでいただけると嬉しいです。読んでくださって本当にありがとうございます! (2021年6月16日 16時) (レス) id: e9e3793e8e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっじぇ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています。続きがすごく気になって、更新される日を楽しみにしています!これからも応援しています。頑張ってください!! (2021年6月16日 10時) (レス) id: 3cc5800027 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちな | 作成日時:2021年5月12日 15時