僕から奪わないでくれ【虎】

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Genta.M side



マンションのエントランスにいた海人を見ると足が止まって暫く動けなかった。




結局しばらくしてからそのまま家に帰った。




固形物は何も胃に入れずに家にあった強めの酒だけを入れる。



胃が暑くなって、酔いが回って、海斗に背中押してもらったけど俺ダメそうなんて弱気な言葉が出てくる。



酔いのせいで海人といることを知っているのに電話をかけそうになった。


いや、よくないと発信音の前に指が止まる。


電話は良くなくてもメッセージぐらい……





素直に「会いたい」と送った。





その後また酒をグッと飲み干す。



メンバーの知り合いなんて手出すもんじゃないと思ったし、長く関係を持つなら少しぐらい相手のことは知るべきだった。


いつも後悔はあとから沢山出てくるが、そんなの遅い。





既読のつかないLINEを閉じ、次にインスタを開いた。



ストーリーが何個か更新されていて見ていくと海人が映る。



知ってるカーペットに座り込み、足にマニキュアを塗る姿。





“初めて貰った”





胸の底がモヤモヤっとする。




そして次に写ったのは相手を特定するには十分だった。


俯き気味ではあったがキッチンに立つAさん。




俺には拒否した料理を振舞ったのだろうか。





“男に手料理を振る舞う趣味はない”なんて言ったけど嘘じゃん。




俺と海人じゃ、海人の方が大切にされていると感じるストーリー。




そりゃあそうか。



当たり前だ。




所詮、関係が関係だもん。





おれは先程送ったLINEを送信取り消した。




向こうから切られてんだ。


Aさん的には会う価値ねぇよな。





酔いが一気に周り、グダッとそのままリビングの床に倒れ込む。



ぜってぇ、明日体が痛くなるな。



そう分かっていたが立ち上がる力はなく、そのまま目を閉じた。

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