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お皿を洗い終わると紅茶を入れて、前に買った焼き菓子を食べながら、ソファーに腰をかけた。
「焼き菓子うまっ」なんてくだらない話をしているとテレビ台の上に出しっぱなしにしていたマニキュアを見てふと思い出した。
「そういえば、マニキュアは塗ってもらったことないかも」
ぼそっと言っただけだったがしっかりと海人の耳には伝わっていたので、きらきらの顔でこっちを見てくる。
「やっていい?」
「手はジェルしてるから、足ならいいよ?」
数日前に時間が無くて落とすだけ落としていたまっさらな足の爪。
海人はひょろっと立ち上がり、マニキュアを持ってくると私の足元に座り込んだ。
そして、スっと足に触れ、マニキュアの瓶を開ける。
すんっとマニキュア独特の匂いが鼻についた。
海人は私の足元をじっくり見て「ちっせぇ」とぼそっと呟き、ゆっくりと指先に触れ、マニキュアを塗っていく。
その姿は真剣そのもので、プルプルと指を震わせながら塗っていく。
お世辞でも上手いとは言えないがその姿は可愛くて、少し足を触られるのは照れくさいが笑みがこぼれた。
真剣な海人の黙って邪魔しないように携帯をいじっていると、カメラを向けているのかと勘違いしたようで「撮ってもいいんだよ」と言わんばかりにピースをしてくるから笑ってカメラを向けた。
「A、それ送っておいて」
「うん、わかった」
「うわっ、ちょっ!動かないで」
「あ、ごめん」
しばらく静かにしていると海人は「出来た」と言って伸びをした。
やっぱり少しガタガタだがそれはそれでなんか可愛らしくて少し微笑ましくなる。
どこかにぶつけて塗り直しにならないように大人しくしながら「ありがとう」と言うと「こちらこそありがとう」と言われた。
海人は全神経を使ったのか床に座ったままダラっとソファーに体を倒した。
海人のタレ目が上目遣いで私を見てくる。
「なに?」と笑うと「はい」と頭を差し出してくるから笑って「海人、よく出来ました」と頭を撫でると満足そうな顔をした。
頭を撫でたことが正解だったようで、海人は上機嫌で笑った。
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ちな(プロフ) - くるみんさん» ありがとうございます〜!主人公ちゃんと同い歳なんですね。ゆったりの更新ですが、ぜひ楽しんでいただけますと幸いです!今後ともよろしくお願いします。 (2021年7月20日 15時) (レス) id: e9e3793e8e (このIDを非表示/違反報告)
くるみん(プロフ) - 元太大好きです!元太の4つ上なので嬉しすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも更新頑張ってください! (2021年7月19日 2時) (レス) id: ca6f57219d (このIDを非表示/違反報告)
ちな(プロフ) - ちゅっじぇさん» ありがとうございます。直接お言葉を頂けることがなかったので、更新の励みになります。少しおサボりしましたが、またゆっくりと更新しますので、また読んでいただけると嬉しいです。読んでくださって本当にありがとうございます! (2021年6月16日 16時) (レス) id: e9e3793e8e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっじぇ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています。続きがすごく気になって、更新される日を楽しみにしています!これからも応援しています。頑張ってください!! (2021年6月16日 10時) (レス) id: 3cc5800027 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちな | 作成日時:2021年5月12日 15時