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Genta.M side
俺はしゃがみこみ女の子の頭を撫でた。
「不安にさせてごめんね。俺、彼女居ないよ。不安にさせないようにもっと頑張るから、これからも応援してくれたら嬉しいな」
そう声をかけるとより肩を震わせて泣き出した。
友達が「ありがとうございます。行ってください」と声をかけてくれたので、「じゃあ、またコンサートかどこかで」と言ってその場を立ち去った。
沈黙を破ったのはケイだった。
「……大丈夫?」
「んー……大丈夫っしょ」
真っ直ぐ帰宅を考えていたが、足が重くなる。
肩を震わせて泣く女の子の姿が焼き付いて離れない。
かと言って俺にはなんも出来ない。
「……そう言いながらこの前大荒れしたじゃん」
「それはそう。……否定できねぇわ」
乾いた笑いは何にも吸収されず消えていく。
「……ファンにあんなこと伝えた後に言う言葉じゃないのは分かってんだけどさ、会いたいなら会いに行けばいいと思う」
「……なんの事?」
「Aさん」と言う言葉にドキッとした。
まぁ、あんなに大荒れなら分かるか。
ケイは誰よりも長く一緒にいたし、バレるよな。
そりゃあバレない方がショックというかなんか複雑な気もする。
「他のもので補うでもいいけど、そんなに苦しそうな顔するなら会いにいけよ」
俺は何も返事をしていないのに、ケイは「この時間ならもう家かな?家どこだっけ?海人に聞けばわかっかなぁ」なんて勝手に独り言のようにブツブツ言ってくる。
……勝手だなぁ
俺が何も言わないからか、携帯から顔が上がり目が合う。
「行かないの?」
「……行く」
真っ直ぐな目は俺の口を無意識に動かせる。
ここ最近1番いい笑顔で「お前はド直球がいいと思うよ」と言う。
さすが相棒っていうのか?
「……ッ!じゃあ行くわ……!」
思い立ったら吉日ってやつ?使い方合ってるかしらねぇけど。
急に走り出す俺にビックリして「家は!?」なんて声がかかるが「知ってる!!」と言えば笑い声が夜の路地に響いた。
ここ最近の俺は俺っぽくなかった。
みんなに心配も迷惑もかけてウジウジ。
俺は突き放されても追いかけるのが俺っぽいじゃん。
あの酔った夜の記憶を思い出しながら来たマンション。
エントランスが見えると歩みが急に止まった。
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ちな(プロフ) - くるみんさん» ありがとうございます〜!主人公ちゃんと同い歳なんですね。ゆったりの更新ですが、ぜひ楽しんでいただけますと幸いです!今後ともよろしくお願いします。 (2021年7月20日 15時) (レス) id: e9e3793e8e (このIDを非表示/違反報告)
くるみん(プロフ) - 元太大好きです!元太の4つ上なので嬉しすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも更新頑張ってください! (2021年7月19日 2時) (レス) id: ca6f57219d (このIDを非表示/違反報告)
ちな(プロフ) - ちゅっじぇさん» ありがとうございます。直接お言葉を頂けることがなかったので、更新の励みになります。少しおサボりしましたが、またゆっくりと更新しますので、また読んでいただけると嬉しいです。読んでくださって本当にありがとうございます! (2021年6月16日 16時) (レス) id: e9e3793e8e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっじぇ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています。続きがすごく気になって、更新される日を楽しみにしています!これからも応援しています。頑張ってください!! (2021年6月16日 10時) (レス) id: 3cc5800027 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちな | 作成日時:2021年5月12日 15時