僕から奪わないでくれ【虎】

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Genta.M side



アイドル誌の撮影。




1番後ろをケイとちゃかとくだらない話をしながら歩く。



今度行きたい店の話とか最近食べたものの話とか。

仕事が早く終わったら飯でも行く？なんていつもと変わらない日。




先頭を歩き、扉を開けたスタッフが「TravisJapanさん、入ります」といつもの流れ。



「よろしくお願いしますー」と挨拶をしながら、入れば目の前で海人が「A」なんて名前を呼ぶ。







知ってる名前にぱっと顔を上げると見覚えのある顔。






視線は俺じゃなくて、名前を呼んだ海人にいってて、海人とAさんを俺の目線は行ききする。





けど、何度見たってこの一瞬でその2人は以前から知り合いだと分かる。





一瞬微笑んだ顔が優しくて、俺は彼女のそんな顔見た事あっただろうか？






その顔は俺と目が合うと驚いた顔に変わった。







乱れた髪も服も感じさせないキャリアウーマンって感じのパンツスタイル。





下着姿で電話している姿を見た時にキャリアウーマンを想像したが、実際にこの目で見ると動揺してしまう。


知ってるようで知らない人。





海人の「……何？元太と知り合い？」と言う声にドキッとしたが、Aさんは平気そうな顔をして笑った。





「飲み会で半年ぐらい前に会ったことあったの。元太くん、久しぶりだね」







久しぶり、ね……


お前はここの距離感だよとしっかり引かれた気がした。






しかも、なんでそんな簡単に上手く嘘が吐けんの？




慣れていると感じることが多かったが、なんか他の男と一緒にされている気分。




一緒だけど一緒じゃないと思ってたのは俺だけなの？




あの居心地の良さや関係の良さは他の女にはなかった。

俺にとっては勝手にAさんに特別さを感じていたからもやもやした。





ムカつく。







俺も対抗するように平気な顔を装って「え？久しぶりじゃないっすか。海人と知り合いなんて、聞いてないっすよ」と笑った。








でも、もうこれで終わり。






「私も知らなかったよ」なんてAさんが笑って、メンバーとはじめましてって挨拶すればそれで終わり。






海人と知り合いだったけど、それは全部偶然で全部これでまとまる。









そう思っていた。

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