お兄ちゃんの合格と、それから ページ11
.
「私が投影された！」
それは突然現れた。
目の前にドアップの明らかに違う画風。顔が濃い。目は口ほどに物を言うなんて言葉があるが、この人に限っては目は洞窟ほどに先見えぬだよ…。
「オール、マイト…ンで雄英からの…？」
「さ、さぁ…」
普段テレビで見るヒーロースーツのオールマイト、ではなく。
どうやってそのサイズを用意したんだと言わんばかりの大きさの、どことなくアメリカンを彷彿とさせるストライプのビジネススーツを身にまとったNO.1ヒーロー。
「いやぁ爆豪少年！君の実技テスト、私もよく見せてもらったよ。」
「…フン」
「嬉しいくせに」
「黙れ」
これはお兄ちゃん宛の手紙から出てきた機械。
恐らく録音されて送られてきたこれは、お兄ちゃんの受験結果を伝えるものだろう。
そこから始まるオールマイトからの、憧れからの真っ直ぐな賞賛に、お兄ちゃんは珍しくも頬を染めていた。
肯定も否定もせず、ただオールマイトの言葉をジッと聞いているお兄ちゃんの顔は、真剣に見えてその実、何か全く別のことを考えているようにも捉えられた。
「君のポイントは77P！今回の入試1位の好成績だ！とても素晴らしい！当然、合格さ」
「っし、ま、当たり前だけどナ！」
「声震えてるよ」
「武者震いだわ」
「もう終わってるけど」
待ちに待った”合格”という言葉。
お兄ちゃんはその言葉を聞くと、ずっと机の下で握りしめていた拳に一層力を入れて強く握った。
それこそ、隣の私にまでギリギリと音が聞こえてくるほどに。
余韻に浸って喜びをかみ締めているお兄ちゃんを横目に、私は机の上に転がったもう1つの機械を手に取った。
これが私の結果。合格でも不合格でも、それが私の結果なんだ。
1度深呼吸をして、気分を落ち着かせる。
「あっ」
「早くしろや」
……ために深呼吸をしたのに、肝心の機械はお兄ちゃんに奪われて、心の準備をする間もなく目の前にはオールマイトが再び現れてしまった。
突然のことに私の心臓はバックバク。
体の内側から、今にも飛び出さんとばかりに皮膚を突き破りそうなほど大きく波打つ。
バクバクだかドキドキだか、それともズキズキなのかは知らない。けど脳に直接届くような確かな胸の痛みは、私の鼓膜を揺らしていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
