緑谷出久という少年 ページ2
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「お兄ちゃん！ちょっと待ってぇ〜！」
「遅せェわ！！はよしろや！！」
雄英高校、入試当日。既に玄関でスタンばっている兄に声を掛けてバタバタと準備をする。どうやら昨日の夜遅くまでゴソゴソしていたのは今日の為の準備をしていたかららしい。
流石お兄ちゃん、用意周到だ…！！
「終わった終わった！行こう！！」
「何先に行こうとしてんだ！！テメェの事待ってやってたんだろォが！！」
「やー！ごめんって！！！」
お兄ちゃんが手を爆破しているのを見てピューーンと家を飛び出す。家の中からはママの「こォら！！爆破すんじゃない！！！」というお兄ちゃんへの怒声が聞こえてくるけど知らない知らない。
よーし！行こう！と前を向くと、そこには目を見開いている出久くんが。
「わー！久しぶりー！」
「Aちゃん…！久しぶりだね！かっちゃんとは違う中学にしたんだね」
「あ！うん！出久くんはお兄ちゃんと同じだもんねぇ」
緑谷出久。私とお兄ちゃんの幼馴染の男の子だ。彼は幼い頃からオールマイトの大ファンで、ヒーローを志していたんだけど、この超常社会では珍しい"無個性"だった。何の個性も持たない"無個性"は、典型的な差別の対象だった。出久くんは周りの子達からも、そしてお兄ちゃんからもイジメを受けていた。
かく言う私は、彼にとても恩を感じている。私の事を「爆豪勝己の妹」では無く「爆豪A」として見てくれる、数少ない人物だったからだ。
出来るだけ、お兄ちゃんが出久くんをイジめている時は庇っていたけど、違う中学になってからはよく分からない。
お兄ちゃんが大人しくなったのか、それともエスカレートしてしまったのか…。出久くんとは話さなくなってしまったし、お兄ちゃんから出久くんの話をする事は無かったから知る術が無かったのだ。
「出久くんも雄英受けるの？」
「う、うん！かっちゃんには止めろって言われたけど…。小さい頃からの目標だし…」
「……出久くんが言うなら私は止めないよ！それに、なんか筋肉もすっごいついてるし…トレーニングでもした？凄いね！」
久しぶりに出久くんとの会話に花を咲かせていると、家から出てきたお兄ちゃんが私の首根っこを掴んで駅の方へ向かってしまった。
「出久くんまた後でねー！！」と叫ぶとお兄ちゃんの拳骨をくらった。イタイ。
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