2度目のカミングアウトに怪しい影 ページ21
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「あっ、えっと…青城くん、だったよね…！」
「……う、うん…。えっと、誰…」
「わ、私！結条美来っていうの！！」
「ぁ、うん……？」
今日になってから急に沢山の人と接して人疲れした俺は、水分をとるという建前の元蜂楽達の幼馴染が集うグラウンドから逃げ出す事に成功した。いや、成功したつもりだった
背後に気配を感じて、振り返るまではこの女が近付いて来ていた事にすら気付かなかった。
……見たことある。朝、街角でぶつかった女だ。妙に脳裏にこびり付いて離れないこの女の顔が、目の前の女の顔と一致する。そしてその顔の横に浮かぶ【ヒロイン】という文字。さらには【結条美来】という名前。面倒臭い事になったぞ
「それで、何か用が…？」
「ち、違うの！特に用は無かったんだけど、顔色が悪かったから心配になっちゃって…！」
そういえば、あのノート。この世界について記されたノートの目次には【イベントについて】というものがあったっけ。
くそ、イベントって言ったらこんな接触イベントしかねぇ。好感度をあげるチャンスってか？じゃあこの女には今、選択肢が見えてる？今の言葉も選択肢から選んだ言葉なのか？
こんなに考えてるはずなのに、口からはスラスラと違う言葉が出てきた
「………、ありがと、うれしい」
こんな事、思ってない。
というか、なんだよ、なんで気付かないんだ！！コイツの俺を見る目は明らかに獲物を狙う獣の目。簡単に言えば攻略対象を狙う目だ。……俺も攻略対象なのか！？嘘だろ！？
「…！ううん！気にしないで！もし体調が悪いなら保健室に着いていってあげようか…？」
「…頼もうかな。結条の、迷惑じゃなければ……だけど」
「迷惑なんてそんな！気にしないで！」
白々しく笑顔を作るこの女を、俺の体は易々と受け入れる。けれど、脳と思考はこの女を受け入れはしなかった。
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隣を歩く推しを見て、私は内心ほくそ笑む。
推しが弱ってる。私が1番にそれに気付いた。そして推しは私を頼ってくれた。これがどんなに嬉しいことか…！
「青城くん」
「…？」
「辛かったら言ってね」
ピコンッとなって上がる、彼の頭上の数字。今の数値は【12】。
彼は確かに乙女ゲームの中の人間で、ここは乙女ゲームの世界。だけれど私は生身の人間。
シナリオ通りになんか進んでやらないんだから。
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