２９.。o○you ページ29
◇
ノックの後、
すぐに開けられたドアから息を切らした翔くんの真っ直ぐな瞳が現れた。
こんなに正面から顔をたのは
いつ以来なんだろう…
相変わらず大きくて澄んだ目はやっぱり私の心に刺さるように鋭く光って
肌や
顔立ちや
彼の存在その物から醸し出される雰囲気に飲み込まれて身動きが取れない。
『元気だった？』って言った？
『気がついてたよ』って言った？
『ありがとう』って今、そう言ったの？
私はあなたを傷つけた。
怒ってるだろうし思い出したくもない存在なんだろうって思ってた。
階段を上がっても
演奏中も
決して合うことの無い視線に胸が苦しくて
痛くて苦しくてたまらなかった。
なのに
そんなに優しい声で話しかけないで
ねぇ、
今『抱きしめていいの、』って言った？
気がついたらあの頃大好きだった温もりの中に包まれていて
香りも
声も
なにもかもが切ないほどあたたかいよ。
言葉を紡ぎながら抱きしめる手に力が入って
かすれてく低い声が『ずっと好きだった』と消えそうに言ったのが夢みたいで息が出来ない。
あの頃よりずっと強いその言葉の響きは
あの頃より低い声と熱い腕に抱かれて優しさを増して戻ってきた。
大人になりきれなかったのは私の方。
ﾊｧ…
翔「今日、結婚………記念日じゃないのかよ、」
「智とは結婚…出来なかった」
翔「っ!?、どういう事？」
驚いた体がビクンと震えて
彼は視線を合わせるようと体を離した。
下がった眉の下の吸い込まれそうな瞳がびっくりしてる。
「あの頃私、高校生の翔くんに引かれてく自分が怖かった………、」
「智に会ったのは丁度その頃で、社会人だった彼は私の気持ちを知って『結婚しよう』って言ってくれたの」
『自分の傍でゆっくり忘れればいい』って
『何年かかろうと構わないから』って、
智はそう言ってくれた。
「だけど決定的な事を言われたの」
翔「誰に？」
「お母様、私達の関係を全て知ってらっしゃったの」
翔「まさか!!……そんな事一言も……」
「もう会わない方がいいって、」
『A先生の未来に翔が傷をつけてはいけないから』って１歩引いてそう言って下さった。
大人な私が身を引くべきだったのに
信じて任せてくれたお母様の信頼を裏切ったのは私の方だった。
そんな事に気がつかない程未熟だった。
そんな事に気がつけない程に高校生のあなたに溺れてた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 360人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
新月(プロフ) - 咲さん» √は本当に素敵なお話で私も大好きです＞＜ベルボーイのニノくんがホテル内を歩く様子が見えるようでとてもワクワクしたりｷｭﾝとしたり……エスプレッソのおまけまで読んで頂けて……笑って頂けたのかなと思うと嬉しいです♪√共々読んで頂きありがとうございました^^ (2014年10月15日 14時) (
レス) id: 90cd8d33e4 (このIDを非表示/違反報告)
新月(プロフ) - 咲さん» 咲さん初めまして(*´∀｀)素敵なコメントありがとうございました.*:.むぅちゃんの所から来て頂いたんですネ♪嬉しいです＞＜エスプレッソは少しホロ苦い雰囲気を出したかった物語で、翔さんの弾いてくれているBGMも少し大人な曲が選曲されていると思います^^ (2014年10月15日 14時) (レス) id: 90cd8d33e4 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - →まだ、むぅぽんさんの√は拝見していないので、ベルボーイの二宮さんの世界がそこからどう広がるのか、新月さんとの融合が楽しみです。素敵なお話をありがとうございました。おまけでは一転した幅広い世界観も面白かったです(*´艸｀*) (2014年10月14日 13時) (レス) id: 40b77fb3bf (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - 初めまして。むぅぽんさんの所からお邪魔しました。√の原点となっている此方のお話。甘く、ほろ苦い其々の想いも詰め込んで、伝えられなかった想い、今だから伝えられる想いが胸にジーンときました。出会わせてくれたむぅぽんさんにも感謝ですね(*´艸｀*)→ (2014年10月14日 13時) (レス) id: 40b77fb3bf (このIDを非表示/違反報告)
新月(プロフ) - あっぷるさん» あっぷるさんはじめまして☆こちらの小説のページに足を運んで頂きありがとうございました。√はとても素敵なお話ですね(*´∀｀)コメント嬉しかったです。ありがとうございました♪ (2014年10月9日 10時) (レス) id: 90cd8d33e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：新月
| 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/novel/0527001/
作成日時：2014年2月7日 22時
