35話 ホトトギス 子規Side ページ37
僕の異能力『ホトトギス』は、簡単に云えば、相手の嫌な記憶を悪化させて幻覚を見せる事が出来る異能力だ。
つまり………相手の精神を崩壊させる異能力。
今、その異能力をAちゃんに掛けた。
｢………ごめん。ごめん、Aちゃん｣
僕は何回も呟いた。
一筋の涙が頬を伝う、僕は慌てて拭う。
Aちゃんは膝から崩れ落ちて、地面に両手を着いていた。
見ただけでも呼吸が荒い。肩が何度も何度も上下に動いている。
すると下松さんが楽しそうに笑った。
｢へえ？頑張るな、お前｣
下松さんはいう。
｢子規の異能力に、耐えれる人間なんてそうそう居ないんだぜ？｣
下松さんは僕の方を向いて睨む。｢手ぇ抜いてねぇよな｣
背筋が凍る。
｢抜いて無いです｣
｢ああ、そうか。じゃあ、最大限の力で掛かれ｣
下松さんは冷たく言い放つと、Aちゃんの髪の毛を掴み上げた。
彼女の表情がしっかり見えた。
少し眉間にしわが寄っているだけだった。
何で、そんな顔をしてるんだよ……！苦しくない訳無いだろ…！？
母親を殺した記憶が見えて居るのに、何でそんな顔が出来るんだよ…！
やめろよ、やめて呉れよ……！
僕は目を背ける。
｢子規！｣
｢ッ……！｣
僕は異能力を強める。どんどん強める。
力を入れる度に、Aちゃんの表情は歪む。
その瞬間だった。
下松さんがAちゃんの眼帯を引きちぎった。
何かが切れた様に俯き、何かの恐怖に奮えている。
呼吸音が聞こえてきた。
｢………違う、違う、違う、違う、違う｣
Aちゃんは何度もいう。
｢ごめん、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい｣
下松さんは目を見開いて笑った。
ぱきぱきとAちゃんの周りに合った物がひび割れていく。
｢下がれっ｣下松さんが叫ぶ。
下松さんの目的は是だ。
Aちゃんの暴走を見る事。
Aちゃんは顔を上げる。黄色と、青色の、瞳。
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作者名：さくら志摩 | 作成日時：2018年8月9日 18時
