18話 穴埋め ページ19
外は土砂降りの雨だった。
そのおかげで自分が泣いて居る事は、誰も気付かない筈だ。
水溜まりだろうが何だろうが、構わずに踏み締める。泥水が飛び跳ね裾に着くが、正直どうでもいい。今はただ、走りたかった。
私の、こんな頭じゃ判らない、判らないよ。
日本を背負って立つ程、私は偉くない。凄くない。
裏切って、鉄仮面に付くか。鉄仮面を捨てて、日本を消すか。
選べるのは、私。紛れも無い、私。
だけど…………っ!!
私は立ち止まり、建物の壁に寄り掛かりしゃがみ込んだ。
嗚咽を押し殺して、涙を流す。
……………なんで、こんなに悩むんだろう。
何時もの私なら特広の調査員として、悩む間もなく日本を守る為に鉄仮面に入るのに。
鉄仮面を棄てるなんて選択肢、初めから生まれないのに。
私は、太宰さんを裏切りたくない……っ。
私ははっとする。
どうして、誰よりも速く太宰さんが出てくるの。
太宰さんは、私の憧れの上司だから。あの時、“私の大切な部下”と云って呉れたから。
会うと何故か胸が締め付けられるから。
考えるだけで、暖かくなれる。大切な人。
私は___。
すると、後ろから声が聞こえた。優しい声、憧れの声。
振り返ると、其処には太宰さんが立っていた。
「太宰、さん……ッ」
駄目だ。
「どうしたんだい?」
来ないで。
「何か……有ったんだね」
私の、上司。憧れの、上司。
私の、大切な人。
いつの間にか、私は太宰さんに抱きしめられていた。
青白い光が、私を包む。
頭痛が私を襲う。
記憶が、穴埋めされて行く。
____________そして、全てが繋がった。
「帰ろうか、皆心配して居るよ」
「………………………………はい」
全て、繋がった。
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作者名:さくら志摩 | 作成日時:2018年8月9日 18時