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そんな俺の頭の中なんか知るわけもないAは、俺の言葉にパンチでも食らったみたいに目をぎゅっとつむって、それから恐る恐る俺を見た。
『……探し物、ですか?』
Aの瞳の中には、俺への疑いと、不信感しか無かった。
それを認めると、分かっていたけど腹の中にある熱い気持ちが、ぐらぐらっと音を立てて煮えて。
それを宥めるために、ふー、とため息を一つ。
あー、でもやっぱり落ち着かない。
なんで、俺にそんな目を向けられるの。
俺ばっかり思ってるみたいで、ほんと。
イライラする。
「は…そうだね。ずっと探してたから、こんなとにあるなんて思わなかったよね」
隠せない怒りが声に出てしまって、Aは少したじろいだみたいに、後ろに下がった。
それから、わざとらしく背中を向けて、またあの、仕事してますから話しかけないで、て感じで
『私、リストにあるもの、持っていかなきゃいけなくて。あの、だから、仕事中ですので、ちょっとすみません』
って、とっ散らかった話をするから、ちょっと笑った。
めちゃくちゃ動揺してるじゃん。
自分があの夜の相手だって、バレたく無い態度にしては、全然ダメだよ。
そもそも俺は、100%本人だってわかって動いてるし。
俺はそっと足音を忍ばして、無防備な背中に近付く。
だからもう、我慢しないで。
細い首を掴んで、
押さえ込んで、
その感じやすい体にわからせてしまおうか。
あなたが、Aに間違いないって。
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作者名:フネ55 | 作成日時:2022年12月10日 10時