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そのあとの訓練所は、少し騒がしかった。
下級兵の休憩所からの声や、ひそひそと此方を見て囁く声。
訓練に、集中できなかった。
「A先輩。気を抜かんといてくださいよ」
寸止めで、剣は胴体まで来ていた。
攻撃をするなんて一生できないんじゃないかと言うレベルで、防御すらできなかった。
「…ごめん」
「謝らんといて下さい。そんな暇ないですよ」
あのあと、しょっぴくんは言ってくれた。
『一人が怖い腑抜けなんやったら俺も手伝ったるわ。先輩がトントンさんに言ったやつ、今回で叶えりゃいいんすよ』
って。
怒りながら、優しい言葉をかけてくれるしょっぴくん。
タオルを投げて、「泣かんとって」ってタメ口で言われたときはびっくりしたけど。
「あ。」
今、しょっぴくんの髪を私の剣が掠めた。
ぱら、と落ちる短い茶色の毛は、光に反射して白く光った。
「できるじゃないすか」
「…できた？」
できましたよ、といい微笑んでくれる。
顔をあわせてすぐ逸らす癖は、まだなおらないけど。
「おー。やっとんなあ」
ドアを開けて入ってきたのは、しんぺい神。
水色の髪をふわふわと揺らしながら、どんどん近付いてくる。
「トントンが心配やからAちゃんの様子見に行ってって。しょっぴくんにいじめられてない？」
「人聞きの悪いこと言わんといてください」
「ええやんええやん。二人とも怪我してへん？」
じく、と右の手のひらから痛みがあった。
見てみると、豆ができていた。
昔はよくあったことだけど、今はじわりじわりと痛みが伝わる。
「いたい」
しんぺい神に伝えれば、包帯を出してくるくるとまいてくれた。
しょっぴくんはその間、剣を片付けて椅子で飲み物を飲んでいた。
「Aちゃん、いい後輩を持ったねえ。後輩だったときのAちゃん思い出して、なんか新鮮やわ」
しんぺい神は、ちらとしょっぴくんの方をみて、錠剤を手渡してきた。
なんて書いてあるんだろう、…くろみぷら…？
「抗うつ薬。毎日2錠。朝と夜に飲んで、不調があれば直ぐに医務室に来て。」
真剣な声で言ったあと、ぱっと明るい声に戻し
「じゃあ、しょっぴくんも。また何かあれば来てね〜」
と。
手をひらひらと振り、ドアを開けて出ていく。
抗うつ薬。
しょっぴくんにばれないよう、そっとポケットに仕舞いこんだ。
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作者名：eyescoffee | 作成日時：2019年4月5日 6時
