3 ページ3
落ち着いたところで、食堂に向かった。
座っているのは、幹部の面々と、見たことのない人。
やっぱり視界は記憶の中の色だけで構成されて、始めてみる人は、何色の瞳をしているのかわからなかった。
強いて言うなら、…グルッペンさんのような、濃い、暗い色。
「A」
重低音が耳に響いた。
「きてくれたんやな、Aちゃん。」
煙草を断続的に吸うスーツ姿の人。
「はい、全員揃った。しょっぴくん、自己紹介してくれ。」
「はい」
高くも低くもないような、落ち着いた声。
「しょっぴです。えーと…前衛の兵に所属します。よろしくおねがいします。」
前衛。
かれは、きっと、皆を守る力がある。
「Aはしょっぴの先輩やから、なんかあったらこいつに聞いてくれ」
「あ、A。俺、覚えてる？シャオロン、やけど」
視線を少し上げれば、丸く大きい琥珀色の瞳があった。
「しゃ、おちゃん。だよね。覚えてるよ、私。」
言葉が詰まる。
上手く、出ていかない。
ちゃんと覚えてるんだよ。
ゾムより先に幹部になるって言って、いっぱい頑張ってたもんね。
結局ほぼ同時のタイミングで、愚痴をこぼしてたよね。
「A、よかった、ほんまに、俺ずっとAが練習こんくなってから心配しとったのに、シッマがあかんっていうから、っ」
しゃおちゃんまで、ぼろぼろと泣く。
私が慰められてたのに、今度は私が慰める番。
「ごめ、ん。れんしゅ、さぼっちゃって、さみしかった、んだよね。」
いつしか一回り大きくなった体は、私のことを体に納められる程になっていた。
いや、私が小さくなったのかも、なんてね。
「シャオロン、あんまAにべたべたすんなや。」
「うっさいわボケ！！」
自分のことで、こんなにないてくれる人がいたのか。
久しぶりに、いや、初めて愛を感じた。
「ありがと、う」
よりいっそうぎゅ、と強く抱き締められて、耳元で涙声で「ええよ」と言われる。
しゃおちゃんはぼろぼろと泣いたまま席に戻り、隣のロボロに叩かれていた。
「おかえり、A。出てきてくれたということは、また俺らを守ってくれるということだろう。」
「勝手な解釈しすぎ。…でも、おかえりAちゃん。待ってためう〜」
みんなから、暖かい言葉がかけられる。
それでも、みんなと目を合わせることはできなかった。
ごめんね、わたし、がんばるから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：eyescoffee | 作成日時：2019年4月5日 6時
